結婚式で看護師E子が泣き出した理由

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   今回取り上げるのは、看護師のE子さん(26歳)です。幼い頃からの夢を叶え、国家試験にも一発合格。今は、地方の総合病院で、夜勤もこなして頑張っています。そんな彼女が、昨年結婚した際、看護師長さんからのスピーチで『号泣』してしまったエピソードを紹介します。

白血病の患者さんと向き合う日々

結婚式で・・・
結婚式で・・・

   看護師の仕事は、働く場所によって大きく、「病棟勤務」か「外来勤務」に分けられます。「病棟勤務」の場合は、入院患者さんのお世話をするのが主な仕事。当然、夜勤もあります。一方、「外来勤務」は、様々な症状を抱えた外来の患者さんを看るのが仕事です。お給料は「病棟勤務」の方が、夜勤があるぶん、高くなるケースが多いようです。

   E子さんによると、「私の通っていた看護学校では、卒業後、ほとんどの学生が『病棟勤務』を選ぶ」そうです。理由は、「外来だと、お給料が少ないから」(E子さん)。病棟勤務の場合、月に8日以上の夜勤がありますが、「若いうちは何とかなる」との思いもあったそうです。

   彼女の希望は「消化器内科」でしたが、配属されたのは「血液内科」でした。白血病の患者さんも入院しているところです。長期入院の方も多く、日常的に「死」と向き合う日々。精神的、体力的に辛いことは想像に難くありません。

   そんな彼女が、2年前、「病院で決められたリフレッシュ休暇を取って旅行に行く」と言うので、久しぶりに会いました。「仕事はどう?」と尋ねたものの、E子さんは言葉少なです。「お給料は、それなりにいいけど、大変だから......」と、つぶやくように言っていました。それ以上、何も聞けなかったのを覚えています。

看護師長あいさつで・・・

   彼女は昨年、同じ地域の中小企業に勤める男性と結婚しました。披露宴で、彼女の上司としてスピーチをしたのは、50代の看護師長さんです。

「E子さんは、勘がよく、よく笑い、患者さんとも丁寧に向き合う立派な看護師です。私も娘のように、成長を楽しみにしていたのですが、昨年、E子さんにとって、とても辛い出来事がありました......」

と、神妙な顔で切り出した看護師長さん。

   どんな辛いことがあったのか、詳しくは言わなかったものの、「それ以来、彼女からは笑顔が消え、みるみる体重も落ち、上司として『休職』を勧めようと思っていた」と言うのです。看護師長さんは続けます。

「ところが、ある時から、少しずつ、少しずつではありますが、彼女に笑顔が戻るようになりました。聞くと、お付き合いしている方がいると、はにかんだ笑顔で答えてくれました。きっと、E子さんの支えになってくれる男性なのだろうと思いました。新郎の◯◯さん、E子さんを、どうかよろしくお願いします」

   看護師長さんの挨拶が終わると、会場は暖かな拍手に満ち、E子さんはボロボロと涙を流していました。死を迎える患者さんたちと向き合い、辛かったこと、それを支えてくれた彼のこと、全てが脳裏に蘇ったのでしょう。これからは、家族に支えられながら、看護師としてさらなる成長をしていくのだろうなぁと、胸が熱くなりました。(北条かや)

北条かや(ほうじょう・かや)

1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。著書に『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』。ウェブ媒体等にコラム、ニュース記事を多数、執筆。TOKYO MX「モーニングCROSS」、NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(2015年1月放送)などへ出演。
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