看護師長あいさつで・・・
彼女は昨年、同じ地域の中小企業に勤める男性と結婚しました。披露宴で、彼女の上司としてスピーチをしたのは、50代の看護師長さんです。
「E子さんは、勘がよく、よく笑い、患者さんとも丁寧に向き合う立派な看護師です。私も娘のように、成長を楽しみにしていたのですが、昨年、E子さんにとって、とても辛い出来事がありました......」
と、神妙な顔で切り出した看護師長さん。
どんな辛いことがあったのか、詳しくは言わなかったものの、「それ以来、彼女からは笑顔が消え、みるみる体重も落ち、上司として『休職』を勧めようと思っていた」と言うのです。看護師長さんは続けます。
「ところが、ある時から、少しずつ、少しずつではありますが、彼女に笑顔が戻るようになりました。聞くと、お付き合いしている方がいると、はにかんだ笑顔で答えてくれました。きっと、E子さんの支えになってくれる男性なのだろうと思いました。新郎の◯◯さん、E子さんを、どうかよろしくお願いします」
看護師長さんの挨拶が終わると、会場は暖かな拍手に満ち、E子さんはボロボロと涙を流していました。死を迎える患者さんたちと向き合い、辛かったこと、それを支えてくれた彼のこと、全てが脳裏に蘇ったのでしょう。これからは、家族に支えられながら、看護師としてさらなる成長をしていくのだろうなぁと、胸が熱くなりました。(北条かや)