「T大の弟にはかなわない・・・」 そんな「工業高校卒」の兄が「大化け」したワケ

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   本連載では、ちと「??」と思う学生の話が続いている気がするので、今回は「良く頑張った!!」という学生の話でもしてみようかしらん。

   そのリケダンは、実は工業高校出身であった。昔ではあまり考えられないかもしれないが、最近では工業高校や商業高校から大学に進学してくる学生、専門学校から編入してくる学生もいる。

基礎的な数学や理科の学習内容が、足りていない学生も

数学は得意です!?
数学は得意です!?

   もとが「資格修得や就職」を目的とする学校なので、普通高校と学習する内容が違う点も多く、入学後は相当な努力を要する。つまり、ひらたく言うと理系としての基礎的な数学や理科の学習内容が足りていないってことね。残念ながら途中で挫折する学生もいるが、大化けする学生もいる。

「どうして、大学に進学しようと思ったの?」
「勉強も好きじゃないし(工業高校)卒業したら就職しようと思っていたんですけど、まあ、大卒の方が良いかなと・・・」
「そう、でも相当頑張らないとついていけないよ」

と入学当初は標準的な受け答えをしていた。成績も学科内で下の上ぐらい・・・まあ、頑張っている方ではあったが。

「今度、英検準2級を受けようと思います」
「そう、頑張ってね」

   大学生で「英検準2級かよ」って思うかもしれないが、「英語なんて全く必要ない」と思っていた高校時代から考えれば、頑張っていると思う。ちゃんと一発で合格したし。この頃、成績中の下ぐらい。

「大学院に進学したいと思っています」
「また、どうして?それに今の成績だと合格するか分からないよ?」
「勉強が面白くなってきて、大学院を出て技術者になりたいんです」

国際会議で論文発表

   じつは、彼には非常に優秀な弟がいて、T大学に現役合格とか。高校生ぐらいまで「弟に敵うわけない」とあきらめ気分だったらしいが、自分もやればできるんだと考えたらしい。この頃、成績中ぐらい。

「先生の研究室を希望します」
「そう、希望通りになるといいね」

   結局、私の研究室に配属になり、大学院の入試も合格。卒業研究、大学院の修士論文作成と面倒をみることになった。卒研時代は、上の下ぐらいの成績かな。

「先生、英検2級受かりました」
「そうか、よかったな。じゃあ、今度、国際会議で論文発表してみるか?」
「はい、ぜひ、やりたいです!!」
「えっ・・・本気で?」

   そのリケダン、ユーロ圏で開かれた国際会議でポスター形式の研究発表を行った。私も、たまに少しだけ助け舟を出したが基本自力で。

「さっき、長々と英語で質問されていたけど、何、聞かれたんだい?」
「え~っと、実験の詳細とあと・・・そうそう、『KANJI』でお前の名前をどう書くのかって?」

   彼は、国内の学会でも発表も行い、論文も和文と英文とそれぞれ1報ずつ、計2報が学術誌に掲載という結果を残して修士課程を修了した。その甲斐あって、奨学金返還の半額免除を勝ち取り、大手外資メーカーに就職できた。まあ、最終的には成績も上の中ぐらいになったと言う事で。(プロフェッサーXYZ)

プロフェッサーXYZ(えっくすわいじぃー)

国立大学を卒業し大学院修了後、助手として勤務。現在は東日本の私立大学の教授であり、フラスコを持ったリケジョの研究指導をしたり、シュレディンガー方程式に頭を悩ませる男子学生の教育を行ったりしている。受験戦争世代と言われた時代から、バブル世代、ゆとり世代、そして、ゆとりは終わった?という現代まで様々な教育・研究現場を肌で体験している。大学教育のみならず初等~高等教育の現場とかかわりを持ち、日々「良い教育は?」の答えを模索し続けている。ちなみにカクテル好きというわけではない、下戸である。また、「猫」も飼っていない。
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