最近はキーマンと呼ばれる社長や役員のガードが固くなって、新規営業でなかなか会える機会が少なくなってきました。
「突然の連絡で恐縮です。実はご紹介したい商品がございまして、御社の社長様にご挨拶したいのですが」
と電話をしたとしても、会える確率はほとんどないでしょう。私の会社にも様々な営業電話がかかってきますが、大抵の電話は担当者が「結構です」と対応して終了してしまいます。では、キーマンに会うのは無理なのでしょうか?そんなことはありません。ただ、決裁者に会うためには少々の工夫が必要です。会うためにアポイントを取らないといけないのですが、その際にキーマンが「自分で会おう」「現場に任せられない」と思わせる仕掛けをしましょう。
決裁者が会いたくなるキーワード
まず決裁者が直接電話に出ることはありません。大抵の場合は、秘書や担当者への連絡が前提になります。電話をかけて「○○社長の秘書の方におつなぎいただけますか」と告げて秘書の方が出たら、そこからが勝負です。まずは単刀直入に
「経営に直結する問題で会いたい」
「経営者に伝えたい情報があるので会いたい」
と伝えてアポイントを取るのです。大抵の仕事は現場が行っています。
「今回のご提案は経営に関わるテーマですので、社長様にお話をお聞きいただきたいのですが」
「経営判断に大変参考になる情報ですので、直接お目にかかってお伝えしたいのですが」
と伝えて強く面会を希望するのです。すると、意外な程に高い確率でアポイントは取れるものです。私もアントレの営業部長の時代に、上記のようなアポイントのやり方で多くのベンチャー企業の経営者にアポイントを取ったものです。ときには「ご用件は伝えますが」「担当者がお聞きします」と譲らない場面もありましたが、その際には
「経営者でないとご判断が難しいとどの企業様でもおっしゃいますが、大丈夫ですか?」
と「あなたじゃダメ」と念を押すと困惑した声になったりしますが、諦めて決裁者のアポイントの調整をいただけるものです。
更に言えば、アポイントを取ろうとしたときに決裁者が会いたくなるキーワードがあります。ここで4つ紹介しましょう。
キーワード1:「儲かります」
キーワード2:「コストダウンができます」
キーワード3:「同業他社が導入して成功しています」
キーワード4:「同業他社にトラブル発生しました」
得する&損する情報に敏感
要は得する&損する情報に敏感なのです。経営者は、面識のない人からの連絡で「どの会社から」はもちろん意識します。大手企業からの電話であれば会うかもしれません。ただ、経営者も会社の知名度だけの基準で会う・会わないと決めてはいません。
「この話なら会ってみよう」
と思える内容で判断をしています。経営者は何となく会うという判断はしません。余談ですが、経営者は多忙ですが本当に会うべきテーマであれば他のアポイントを飛ばしても会おうとする「計算高い」習性があります。私の体験で1か月も前から約束したアポイントで社長と面会の時間をいただいたにも関わらず、融資を受けている銀行の担当がフラッと訪ねてきたら
「すまないが、大事なお客様が来たので日を改めてくれるか?」
と追い返されたことがあります。大変ショックな出来事として覚えていますが、経営者はそれだけ優先順位を考えて人に会っていることを体感させられる機会となりました。
「いつかこの逆の立場にならなければ」
と今でも思っていますが、経営者は会社名が有名無名だけではなく、必要だと思えばきっと会ってくれるはずです。では話を戻しましょう。
この「同業他社のトラブル」と書いた「キーワード4」はわかりづらいかもしれませんが、例えばこのようなイメージです。
「同業他社のある会社が個人情報の漏洩で大変なことになっているのはご存知ですか?その対策を社長にご紹介したいのですが」
などと危機感をつのる話をすると、食いついてくる経営者は少なくありません。
こうしたキーワードを織り込むと会える確率は更に高まります。
「当社の商品を御導入いただいて売り上げが伸びた事例をお話しさせてください」
「ご同業でのお取り組みをお聞きした事例があるのですが、直接ご説明したいので・・・」
などと琴線に触れそうな言い方で訪問の趣旨を伝えると、意外な程にキーマンが引っ張り出せます。(高城幸司)