「エアラインスクール」で展開される 学生と講師の「空中バトル」とは

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   当連載では久々の「実況中継」。今回のテーマは「エアラインスクール」。なお、当コラムに登場する企業名等は架空のものです。内容等も架空のものです(たぶん)。

対象者は航空業界志望の女子学生

わたしの夢は・・・
わたしの夢は・・・

   実況:みなさん、こんばんは。数字をいかにして積み上げていくか、という知的バラエティ番組、「積み上げてポン」のお時間です。解説は、就活ジャーナリストのアスベスト礼二です。

   解説:こんばんは、アスベストです。

   実況:アスベストさん、今日のチャレンジャーは転覆エアラインスクールの皆さんですが、見どころはいかがでしょうか?

   解説:そうですね。エアライン・観光業界に多数の人材を輩出しているとのことなので、どこまで数字を積み上げるか、楽しみです。

   実況:それではファーストミッション「叩いてドン」。チャレンジャーが対象者をいかに叩いて数字を積み上げるかがポイントです。

   解説:対象者は航空業界志望の女子学生100人。バカっぽい子から真面目そうな子まで色々います。

「努力すれば夢は近づく!」のポイント

   実況:さー、始まりました。おっとチャレンジャー、さっそく熱弁をふるいます。「努力すれば夢は近づく!」「大手エアラインに去年も実績を出した、次はあなたの番だ」。心の名言集と具体的なんだか抽象的かわかりにくいアピールが飛び交っています。

   解説:うまいですね。努力しても夢は実現しないことが多いのですが、「近づく」というのはウソではありません。「次はあなたの番」と言われれば、そりゃあ嬉しくもなるでしょうし。

   実況:さらに熱弁は続きます。「夢をあきらめないためには投資を惜しむな!」

   解説:要は「スクールの費用を払え」ってことですが、熱弁を振るってその気にさせた後にいうあたりがポイントです。これでかなり数字を積み上げていますよ。

   実況:ここでタイムアップ。なんと番組史上初、対象100人、全員脱落なしです。これはすごい!

   解説:受講料30万円として、これだけで3000万円、いい稼ぎです。

   実況:続いてのセカンドミッション「つかんでポン」。先ほどの対象者をいかに脱落させないかがポイントです。

   解説:この手のエアラインスクールだとそれなりに脱落者は出るものですが、どの程度抑えられるか、見ものでしょう。

講師の「逆ギレ」が許される理由

   実況:セカンドミッション始まりました。

「あなたたち、どうしてお花の一輪挿しを用意しないの!授業のときは必ず用意しなさいと言ったでしょう!全員用意できないなら先生、もう知りません!今日の講義はしませんから!」

おおっと、まさかの逆ギレ。アスベストさん、これはどういうことでしょうか?

   解説:「心にみずみずしさを」との理由で受講生に花の一輪挿しを買って机に並べるように、とチャレンジャーは指導しています。ところが、バカバカしいと思った受講生の一部が買わなかったことに逆ギレしているようです。

   実況:いや、しかし、相手はお金を払う受講生、いわばお客様です。いいんですか、あんな態度で?

   解説:社会人ならともかく、世間を知らない学生だとだまされるようですよ。ほら。

   実況:なんと!買わなかった学生含め、全員で謝りに行った~!

   解説:一部宗教系団体とかではこういう手法、よくありますけど、就活塾とかエアラインスクールでもたまにあります。

   実況:授業は、と言えば講師の自慢話か、メイク講座程度・・・

   解説:フライトアテンダントにしろ、空港のグランドスタッフにしろ、求められる素養は講師の時代と今とでは大きく違うはずなのですが、学生からすればわかりませんからねえ。

   実況:ここでセカンドミッション、終了~。なんといまだに脱落者ゼロです、これはすごい。

   解説:さすが転覆さん、がっちり離しませんね。

「英語力」をめぐる攻防

   実況:最終ミッションが始まります。「運命の選択」、これから仕掛け人に登場してもらいます。仕掛け人の問いからどう数字を積み上げるかがポイントです。

   解説:仕掛け人は先ほどと同じくエアライン業界志望の女子学生です。

   実況:では仕掛け人どうぞ。

   仕掛け人:私、英語が苦手なんです。やっていけるでしょうか?

   解説:エアライン志望なら英語はできて当たり前ですからね。これは注目です。

   実況:チャレンジャー、どう答えるか。パスも1回までは許されますが・・・、おっとパスしない。ステイで果敢に攻めます。

「英語が苦手?大丈夫。うちはエアライン業界専門の英語補習も実施しているから。ここで勉強していって夢に近づこう!」

   仕掛け人:でも私、今、大学3年生でTOEICは400点くらいなんです...

   解説:え?400点?3年生の秋で?この子、よくエアライン受けようと思いましたね。

   実況:アスベストさん、どういうことですか?

   解説:いや、エアラインが日本かアジアか欧米かにもよりますが、最低でも600点台はないと。

   実況:600点以下は切り捨てですか?

   解説:もちろん、500点台でも受かる学生もいますが、他のポイントがよほど良かったという条件付きです。まして、半年や1年で200点以上上げるのは至難の業なんですが。

「まあ、ウソはついていませんよ、努力次第なんだし」

   実況:チャレンジャー、果敢に攻める。

「大丈夫、うちの特別講義なら努力次第で半年に200点上げた受講生もいたから」。

仕掛け人、涙しながらうれしそうに補習クラスの契約書にサインした~。まさかまさかのポイントアップ!

   解説:半年でTOEIC200点アップ・・・。まあ、ウソはついていませんよ、努力次第なんだし。

   実況:ここでタイムアップ。チャレンジャーの転覆エアラインスクールですが、番組史上初、最高点で優勝です。おめでとうございます。

   スクール:ありがとうございます。カモ、もとい、学生をどうつなぎとめるかが大変でした。

   解説:講師集めなども大変そうですね。

   スクール:いえ、そうでもないです。元スッチーなんて掃いて捨てるほどいるし、時給1200円も出せば集まりますよ。

   実況:経費を切り詰めるだけ切り詰めたことが勝因のようです。それでは皆さん、また来週。

――今回の「実況中継」は以上です。繰り返しますが、内容等は架空のものです(たぶん)。来週はエアラインスクールの選び方、エアライン就活の現状などをまとめます。題して「エアラインスクールの適性価格はいくらなのか?」。ご期待ください。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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