日本のマラソン人気は、いまだ衰えを知らないようだ。仕事前の早朝や仕事終わりにランニングを楽しむ人が増えているほか、2015年2月に開催される「東京マラソン」の倍率は、過去最高の約10.7倍に達した(東京マラソン財団発表)。
管理職者の間でも「部下に勧めたいスポーツ」として人気のようで、マラソンやジョギング同好会がある会社も少なくない。みんなで楽しく汗を流しているという感覚でやっているかもしれないが、「やりたくないのに上司が言うから...」という部下もいるようだ。
マラソンと仕事に意外な相関関係
人材サービスを提供するVSN(東京・港区)は、20~50代の管理職に就く男女600人を対象に「管理職者の意識調査」を実施、結果を2014年10月22日に発表した。
その中に「あなたの部下に勧めたいスポーツ」という質問があり、上司や取引先とのコミュニケーションツールとして昔からビジネスパーソンに親しまれている「ゴルフ」を抑え、「マラソン」が男女ともにトップという結果になった。
個人競技というイメージが強いマラソンが管理職にも人気というのは少し意外に思えるが、マラソンと仕事には相関関係がある、という見方がある。
「ウレぴあ総研」に掲載されている、投資家でありながら世界各地のマラソンに積極的に参加している小野裕史さんのインタビュー記事では、
「誰かから設定された訳でなく、自分自身で設定した目標に対して努力を積み重ね、結果へと向かっていく点」
「結果を出し続けていくには長期の努力が必要である、一喜一憂しそうな短期的な成功・失敗に左右されず、自分のマインドをコントロールしていく必要がある点」
などでマラソンと仕事は共通しているとし、チャレンジが達成されることで仕事などあらゆる面での自信につながっていく、と指摘している。
上司の提案が部下の仕事の負担になってしまうかも
こうした考え方などから、管理職者の「社員、部下にマラソンをさせたい」という気持ちにつながっているのかもしれないが、部下の側からするとそれが悩みになってしまうケースもあるようだ。
Yahoo!知恵袋には、こんな相談が投稿されていた(09年6月)。
「僕の彼女の職場の上司がスタッフの結束を高めるために、スタッフ数人でマラソン大会に出場しようという計画を立てているらしく、もうすでに一回目の大会に出たそうです。さらにこの一回に止まらず、次々に大会に出る計画をスタッフの同意無しに(彼女は研修中なので断りにくく、初回は同意したらしいですが)勝手に計画し、半強制的に参加させようとしているそうなのです」
職場のスタッフは断りきれずいやいや練習に参加していて、それが体力的にも精神的にも仕事をやる上でかなり負担になっている、という。
「やりたくないならキチンと言えばいいのに」という回答も寄せられたが、「面接の時に、そういった活動に積極的に参加できない人はいらないと断言」され、どうも言いづらいそうだ。結局「体力的に出場できません、と言えば気まずくないと思います」という回答がベストアンサーに選ばれていた。
部下にスポーツを勧めるのもいいが、それが強制ととられないようにする配慮も必要そうだ。(MM)