「就職希望先はアパレル販売」というリケジョ 今どき「理系」の就職先とは

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   さて皆さん、理系の大学を卒業したリケジョやリケダンは、どんな職に就くと思いますか?

   「う~ん、会社で研究・開発部門に入って研究者とか、工場や製造現場で技術者とか、かしらん」と思ってしまう人が多いかもしれません。しかし、世の中そんなに甘くはないのですね。昔は、大学生自体が貴重だったのですが、今はそうでもないし。

まともに研究をやれる時間は数か月もあれば良い方で・・・

   たいていの理系学部では、本来は最後の仕上げとして「1年」かけて卒業論文を作成するというのが標準です。つまり、1年間ドップリと研究に漬かって知識と技術力を培い、さらに「未知なる課題」に挑戦する経験を積むことで社会の荒波を生き抜く力を養い・・・

   ところが、現実はというと、4年生で卒業研究をやるかと思ったらその前に就職活動が始まります。なかなか決まらず、内定を求めて、あっちへウロウロ、こっちへウロウロ。当然、卒業研究に身が入るはずもなし。

   やっと内定をもらったと思ったらもう年末で、まともに研究やっていないのに卒業論文の締め切りまであと2~3か月。クリスマスやお正月という誘惑と戦いながら、なんとか卒論を形だけでも整えて・・・

   要するに、まともに研究をやれる時間は数か月もあれば良い方で、年明けまで就職が決まらないと、残された時間が短すぎて、もう研究などと呼べる領域の話ではなくなってしまう。就活スタート時期の後ろ倒しが話題となっているが、実態はどこまで変わるのでしょうかね。

大手電器店の販売員や、コーヒーチェーン店の店員も

   企業さんもここらの事情はよーく理解されているようで、「大卒の理系学生」を「研究者や技術者の卵」とは、ほぼ考えていないようである。そうそう、たまに3年生の2月とか3月の就職活動中に「卒論のテーマ」を質問する企業さんがある。無理難題を言わないでください。一般に卒論が始まるのは4月です。

   ということもあり、「理系の職」に就きたければ、就職活動を考慮しても2年間は研究に没頭したはずの「大学院修了」というのが必要条件かな。有名どころの大学では、入学式の日に、

「君たちは4年で社会に出るのではなくて、卒業後2年大学院に行って就職するのが普通だと思いなさい!!」

なんて発破をかけるところもあるらしい。

   ただ、この連載の2回目で書いたように、「他者依存型」や「何処でもよかった型」で理系に進んでしまったという学生が居るのも事実ですから、我々が思うほど、当人は「理系の職」にこだわっていないのかもしれません。数年前に研究室に居たリケジョ、「どんな職種を希望してるのですか?」と問うと

「アパレルとかいいな~って思ってます~」

   ア、アパレル...アパレルってなんだっけ? そうか、服飾関連の産業の事か。

「じゃあ、服飾素材の開発とか?」
「いいえ、お店で、洋服とか売ってみたいで~す。楽しそうですし~」
「......ハウスマヌカンですか」

   可愛い教え子の希望であるから、

   「う~ん、どう専門と結び付けよう...」とエントリーシートの内容など一緒に知恵を凝らした。そのリケジョ、希望通りアパレルとはいかなかったが、何とか妥協できる範囲の職種に就職ができた。ちなみに、彼女の同級生のリケダンのうち、1人は大手電器店の販売員、別の1人はコーヒーチェーン店の店員(アルバイト先で店長候補と口説かれたらしい)になった。まあ、本人の希望が第一ですからね。(プロフェッサーXYZ)

プロフェッサーXYZ(えっくすわいじぃー)

国立大学を卒業し大学院修了後、助手として勤務。現在は東日本の私立大学の教授であり、フラスコを持ったリケジョの研究指導をしたり、シュレディンガー方程式に頭を悩ませる男子学生の教育を行ったりしている。受験戦争世代と言われた時代から、バブル世代、ゆとり世代、そして、ゆとりは終わった?という現代まで様々な教育・研究現場を肌で体験している。大学教育のみならず初等~高等教育の現場とかかわりを持ち、日々「良い教育は?」の答えを模索し続けている。ちなみにカクテル好きというわけではない、下戸である。また、「猫」も飼っていない。
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