怒りを「建設的なパワー」へ変える
【 怒りのピークは長くて6秒】諸説あるのですが、怒りの感情のピークは最大でも6秒程度と言われています。
「カチン」と来てから6秒以内で発する言動は感情的になることが多く、非建設的な対応をしてしまうことが少なくないのです。
アンガーマネジメントでは、「反射で怒ってはならない」というメッセージを強く発信しています。
「反射的に怒らない」、「売り言葉に買い言葉を発しない」ことは、「あんなことを言わなければよかった」という自己嫌悪防止につながり、そのためには、「最悪の6秒間」をやり過ごす有効な方法をマスターしておく必要があります。
【 最悪の6秒間のやり過ごし方 1】
アンガーマネジメントでは「ディレイ(反応を遅らせる)テクニック」と呼ばれる方法をいくつか紹介しています。
例えば、「呼吸リラクセーション」という技法。
相手から腹の立つことを言われたら、怒りの言葉で返すのではなく、まずは大きく深呼吸をします。
人は怒りを感じると、呼吸が浅くなり、冷静でいづらくなってしまうので、冷静さを取り戻すよう、鼻から大きく息を吸い、いったん止めて、口からゆっくりと吐き出します。腹式呼吸の要領ですね。
目を閉じて行ったほうがより落ち着けるという人もいます。頭の中を一瞬無にするようにして2~3回行ってもいいです。
呼吸が整い、冷静になれれば、適切な対処を選べることでしょう。
【最悪の6秒間のやり過ごし方 2】
また、上手に自己暗示をかけて、気持ちを前向きにするためのアンガーマネジメント・テクニックも活用してみてください。
「ポジティブ・セルフトーク」という方法があります。
気持ちを高揚させるために、あらかじめ自分で決めておいた「元気メッセージ」「プラス思考フレーズ」を強い気持ちで唱えるのです。
例えば、不当な評価を受けたことで気持ちが折れそうになったときなどに、元気メッセージを唱えることで自分を鼓舞することができます。
メッセージやフレーズは、「未来完了形」で言い聞かせることがポイント。
「負けたくない」というフレーズの中には「負けてしまったら、どうしよう」という不安を含んでいるもので、脳が不安を察知すると、身体がこわばってしまい、ベストなパフォーマンスを発揮できなくなります。
未来完了形のフレーズは「負けないぞ!」。
こうした力強い言葉で自分を激励することで、イライラのもとにもなる不愉快を解消し、建設的なパワーへと変換させられるでしょう。
――怒りが仕事の原動力になるなら、こんなにいいことはありません。まずは、6秒間をやり過ごすことから始めてみましょう。
(月刊『人事マネジメント』編集部/2014年10月号掲載「アンガーマネジメントの手引き」社会保険労務士法人こばやし事務所・小林浩志著)