今回は、とかくイライラしがちな職場での感情を、逆に仕事のパワーに転じるアンガーマネジメントについて、社会保険労務士法人こばやし事務所の小林浩志氏に解説してもらった。怒りをモチベーションに変えてノーベル賞につながる発見をした中村修二教授はその好例だ。
職場の不満に振り回されない
【知らず知らずイライラの渦へ】平成25(2013)年9月に発表された『平成24年 労働者健康状況調査(厚生労働省)』において、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレス」の第1位は「職場の人間関係の問題」でした。
こうした統計から、多くの人は職場でイライラを抱えている状態にあるといえます。 抱えたイライラの感情を家庭に持ち帰ると、夫から妻へ、妻から子へとイライラをぶつけてしまいます。
イライラをぶつけられた子は、自分の弟妹や、翌日学校へ行って、自分よりも弱い子をいじめてしまいます。
こうして、怒りの連鎖に巻き込まれた人は、なんとなく虫の居所が悪くなり、無関係の人についつい文句を言ってしまったりするのです。
誰かに怒りをぶつけられたら、無意識にでも誰かにぶつけないと気がすまない人たちが増えたら、とても危険で厄介で辟易する世の中になってしまいます。
【アンガーマネジメントとは】
アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカから広まった「怒りと上手に付き合う」「怒りの感情をコントロールする」ための心理トレーニング方法です。
よく、「怒らない人になる」ためのトレーニングかと尋ねられるのですが、そうではなく、「怒らなければいけないものには上手に怒れ、怒らなくていいものには怒らないですむようになる区分けをする」ための「技術論」がアンガーマネジメントなのです。
怒りは、人間の基本感情なので無くせません。また、世の中には怒らなければいけない場面は山ほどあります。
ですので、怒らなければいけないものを怒れずに後悔をせず、そして怒らなくていいことに怒っては自己嫌悪にならないよう、適切な仕分けをできるようになって、自分と他人の怒りに振り回されない快適な生活を目指していこうとするためのメソッドがアンガーマネジメントなのです。