安倍政権が「女性が輝く社会」の実現をスローガンにしていることもあり、企業にも女性の積極登用が求められている。特に妊娠、育児中も、変わらず働ける職場環境づくりを訴える声は大きい。
そんな中、「妊娠を理由にした降格は、特段の事情がない限り違法で無効」と、最高裁判所が初判断を示した。ネット上では、当たり前の判断だという声が挙がる一方で、違和感を表明する人もおり、賛否両論といえる状態が続いている。
負担の軽い業務を希望し管理職手当を失う
訴訟の原告は広島市の病院で働いていた理学療法士の女性で、2008年に妊娠が発覚、負担の軽い業務を希望したところ、業務が変わった際に管理職の副主任を外され、月9500円の手当を失った。育児休業の終了後も副主任に戻れず、この降格が男女雇用機会均等法に反するとして、勤務先の病院を訴えていた。
最高裁第1小法廷は2014年10月23日、降格は女性の同意がなかったとして、「妊娠や出産を理由に降格させることは原則として均等法に違反する」とする初判断を示し、原告側を敗訴とした広島高裁に審理を差し戻した。
この判断に対し、ツイッターなどでは「至極真っ当な判断」「昨今表面化しているマタハラに歯止めをかけてくれることを期待」など歓迎の声が上がったほか、「一審・二審で合法としたことの方がおかしい」「これを画期的な最高裁判決と言わざるを得ない日本の現状が悲しい」など、「今さら」との指摘もあった。
「女性は最初から雇わない」という企業も出てくるかも
一方で、「自ら負担の軽い業務を希望して降格したことを訴えるのはおかしい」と考える人も多いようだ。「妊娠や結婚によって仕事に支障が出るのは事実。妊娠した事でこれまで同様に仕事が出来るわけではない」「社会人としての責任も果たせないのなら、真の男女共同参画なんてありえない」など、妊娠したことで仕事の内容が変わるのなら減給や降格もやむなし、との意見も上がっている。
また、「かえってこの判断が女性にとって不利になるのでは」と危惧する声もある。
育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、ブログ(10月27日)で「『だったら女性は最初から雇わない』と経営者たちが考えるかもしれない」と指摘。従来通りの仕事ができなくなった女性への待遇を変えない、余剰人員を確保しておく、休んでいる社員の負担を分担するなどの対応が考えられるが、中小・零細企業では他の社員の負担が大幅に増え、経営状況もひっ迫するおそれがあるとしている。
そもそも出産や育児は女性だけでなく男性のライフイベントでもあるため、今後女性が不利になることがないよう、「妻が専業主婦だって、夫も家のことをちゃんとすべき」という常識を広める、子供をもうけない夫婦が富の再配分という形で育児に協力する、中小・零細企業への支援を充実させるなどの対策を提案している。
高裁はどんな判決をくだすのか。注目が集まる。(MM)