顧問先の動物病院で、去年からレクリエーションと研修を兼ね1泊2日でキャンプをして、サバイバルゲームをやっています。サバイバルゲームをなぜやるかというと、チームワークと役割の重要性を体感するためです。
攻める人と守る人を決めて、それぞれの持ち場を守ったり攻めたりします。勝手な行動をするとそこから相手に攻め込まれてしまうので、自分勝手に行動するとチームに迷惑をかけます。ただ状況はどんどん変わっていくので、臨機応変に対応していくことが求められるという、けっこう頭を使うゲームでもあります。
早朝から一人で食器を洗う新入の獣医師
1泊2日の間一緒にいると、人となりが見えてきます。
私はバーベキューをやる時に、さりげなくどういう行動をするのかを見ていましたが、サボっている人は一人もいませんでした。
野菜を切る人、火をおこす人、テーブルを設置する人・・・
指示命令を待つことなく、自然とそれぞれが自主的にやることを見つけてやっていました。
そうして和気あいあいと1日目が終わりました。
千葉の山奥でキャンプをしたのですが、朝はとても寒く温度は10度以下だったと思います。
私は6時くらいに起きてトイレに行ったら、誰かが水場にいて何かをやっていたので見に行ったら、入社したばかりの獣医師の男性が食器を洗っていたのです。
「おはよう、何で食器洗ってるの?」
と聞いてみたら、
「早く起きたので、やっているんです」
との答えが返ってきました。黙々と食器を洗っている彼の姿を見て、私は彼を尊敬しました。「もともと料理をするのが好きだ」ということを前日のバーベキューの際にも聞いていましたが、通常はこういうことは、後でみんなでやればいいと思うのが普通ですよね。今度会った時に、また詳しく聞いてみようと思います。
朱に交われば赤くなる
この動物病院では、一貫して「自分で考えて行動する」ということと「相手を気遣う」ということを伝え続けてきました。それが組織に根付いてきて組織風土となり、新しい人が入ってきたら先輩がそれを教えるようになってきています。
今年は4月から新人が3人入るということだったので、2月から3月にかけて新人が入ってきたらどのように教育するかということをみんなで考えました。
そしてこの病院で働くにはこういう心構えを持ち、行動しなければならないという具体的なことまで考え、それを入社時に伝えるようにしたのです。
入社してから3か月くらいまでは、いろいろ混乱して大変だったようですが、半年経って少し落ち着いてきたようです。
「朱に交われば赤くなる」ということわざがあるように、入社してきた社員が良くなるか悪くなるかは組織風土次第です。組織風土を作っていくために次の3つを並行して進めていきました。
1:働く上での意識の醸成 (気づき)
2:自分で考えて行動することの意識付け (自立)
3:チームで仕事をすることの意識付け (協調性)
「この病院で働くにあたって、どのようなことを意識しなければならないか」
ということをみんなで考えていきました。いわゆる行動指針ですが、スタッフで作り、 「自立とはどういうことか」をみんなで考えて仕事で実践するようにしました。
上記のことは当たり前のことだと思いますが、なかなか取り組むのは大変です。
社員からも「こんなことやって意味あるの?」という風な不満も出てくることもあり、 なかなか思ったとおりに進まないこともあります。
すぐに変わるわけでもないので途中で止めてしまうことが多いのですが、地道に同じことを何度も言い続けて、社員に伝えて実践させていくことが大事です。
院長不在の時でも病院が上手くまわっている理由
2日目のサバイバルゲームも終わり、いったん病院に荷物を置きに戻りました。
すると緊急の連絡があったようで、疲れてぐったりモードから一変してすぐに仕事モードに切り替わっていました。
この日も休みにしていたのですが、自主的に仕事を始めていました。
私はこれを見ていて去年と同じシーンを回想しました。
去年は7月の上旬に同じように1泊2日の合宿をやったのですが、暑くて熱射病状態になっていました。それでも緊急の連絡があったので、何人かは病院に戻って仕事をしていました。別に院長から命令されたわけではありません。
スタッフは20代、30代前半と若いのですが、院長が不在の時でも病院が上手くまわっています。
この状態は経営者にとって理想なのではないでしょうか。
「社員が受身で困る」と言っている会社は多いです。
自立的な人はなかなかいません。だから会社で育てていくしかありません。
育てるために必要なことは、常に自分で考える習慣をつけさせることです。
そのためには、「上司の心がけ」がとても大切だと考えています。(野崎大輔)