デキすぎるトップの弱点 だから部下育成に失敗する

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平気で自己の弱みを見せるところが、2人の「違い」

   幹部社員との面談を終え、私がそのことをOさんに告げると、彼はこう言いました。

「やっぱり気がつきましたね。僕が見て欲しかったのはそこ。N社長がもの足りないと言う彼ら幹部社員の実態を見て、大関さんだったら社長にどういうアドバイスをするのか聞いてみたいと思ってご足労いただいたってわけ」

   随分と手の込んだ、協力要請もあったものです。

   私はC社の実態を見て、銀行の本部勤務時代につかえた二人の上司のことを思い出しました。同じ部門の部長席に相次いで座った京大卒のK氏と東大卒のY氏。二人のタイプは全然違いましたが、共に業務上の手腕、統率力共に申し分なく、組織リーダーの資質としては甲乙つけがたい存在ではありました。

   しかし部門のまとまりや活性化度合いでは、K氏が部長を務めた時期よりもY氏の部長時代が上回り、部門が次々と打ち出した戦略的な施策の量や質では圧倒するほどの違いがあったのです。それはなぜか。

   K部長は、言ってみると先のN社長と同じ、完璧さを基本として的確かつ詳細な指示を積み重ねて部下からの尊厳を集めるタイプ。一方のY部長は、同じレベルの優秀さを持ち合わせていながら、時折平気で自己の弱みを見せるところが絶対的な違いでした。

   Y部長が見せる弱みとは、「こういう分野の事は俺にはよく分からん。悪いな、とりあえず任せるからしっかりやってくれ」とか、「営業がらみの案件は苦手だ。君らでうまく関連部門と調整してくれ」といった類の言動です。部下たちは、「しょうがない部長だな。部長の仕事までやらされたんじゃ、こっちが忙しくなってたまらん」などと言いながらも、これが部下のモチベーションを巧みに持ちあげることも多く、後から思うに部内のまとまりや活性化は、このY部長の弱み作戦に後押しされたものだったのは間違いないのです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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