数ある業種の中でも、意外と(?)女性が活躍しているのが、「人材紹介サービス業」です。キャリアコンサルタントとして、転職したい人と企業をつなぐ仕事は『激務』ですが、お客様によりよい転職を叶えてもらおうと、前向きに頑張る女子も多いのです。今回は、ある人材紹介会社で働く女子の、ちょっと「生意気な」働きぶりに、スポットを当ててみたいと思います。
「年収600万円~1000万円以上のエグゼクティブ」に特化した、ヘッドハンティング会社で働く、Mさん(30歳)。メーカーの営業職を経て、4年前に転職してきました。接するお客様は、自分より年上の男性たちばかり。が、そんな彼らにも、時には『ズバッと』アドバイスする必要があるといいます。
優秀なのに、転職先が決まらない
Mさんにとって、最近、印象的だったのは、コンサルティング会社出身の男性(Fさん、38歳)です。社内での成長に限界を感じ始めたことから、別の業界も視野に入れて、転職を検討していました。輝かしい経歴ですから、多くの会社からスカウトオファーが入ります。Mさんもメーカーなど数社を紹介し、幾度か面接を受けてもらいました。が、これが、なかなか決まらないのです。
クライアント企業からは、「御社が紹介してくれたFさんは、優秀な方ですね。でも、うちの会社に来て、何をしてくれるのか、よく見えない」というフィードバック(面接の感想)が相次ぎました。
どうもFさんは、面接で、「私は何でもできますけど、御社は何を期待していますか?」というようなことを言っているらしいのです。Fさんは、優秀なだけに、プライドも高いタイプ。「相手企業のニーズ」を把握しようとして、かえって「上から目線」な受け答えをしていたのです。Mさんは、キャリアコンサルタントとして、彼の能力を、何とか「良い方向へ活かせないか」悩みました。
「『何でもできますよ』では、転職できません!」
Mさんは言います。「中途採用だと、企業側は、『この問題を解決してくれる人材が欲しい』など、要求がピンポイントなんです。だから、年齢や希望年収が高くても、アピールポイントが転職先と上手くマッチすれば、スッと決まることも多いんです」。
しかしながら、コンサル出身のFさんの転職活動は、長引くばかりです。Mさんは、悩んだ末、この際ズバッと、Fさんの『弱み』を指摘することにしました。「忙しいから」と言うFさんに、なんとか「電話面談」をお願いしたのです。
「お忙しいところ、ありがとうございます。Fさんについては、多くのクライアントから、『全体的なスキルは素晴らしい』との評価を頂いています。ただ、『何でもできます』では、クライアントも、何を任せれば良いのか困ってしまう。もっと、ご自身が、『御社でこれをやりたい』というのを、積極的にアピールして欲しいんです。ご経歴が素晴らしいからこそ、『これはできない』という『弱み』も見せてください。そうすれば、きっと上手くマッチすると思うんです」
こう言い切ったMさん。電話を切ったあとは、手に汗びっしょりでしたが、Fさんからは、次のようなメールが来ました。「ご指摘、ありがとう。自分でも、転職先で何がしたいのか分からず、悩んでいたところでした。これからも頼りにしています」。38歳のFさんは、その後、「自分に何ができるのか、できないのか」、じっくり向き合い、無事にメーカーへの転職を決めたそうです。
「『生意気ですみません』って思うことは、多々あります。でも、キャリアの専門家だからこそ、見えてくる『弱み』もあるんです。転職が決まったお客様から、お礼のメールが来ると、あの時、ズバッと指摘してよかったと思いますね」(Mさん)
Mさんは、3年後の33歳までに「シニアコンサルタント」に昇格することを夢見て、今日も多くのクライアントと向き合っています。(北条かや)