「夜8時からの会議」に疑問を抱け!
前回コラムでも述べたように、これまで日本の組織は、「人口ボーナス期」のルールに従い、従業員に長時間労働させることで成長してきた。裏を返せば、「家庭を顧みず、深夜も週末も関係なくハードワークできる人」だけが出世できるシステム、といってよい。
しかしこれからの時代、そんなシステムを温存したままで、「残業するのが当たり前」の環境にドップリ浸かっているのは実に危険だ。あなた自身の成長につながらないばかりか、組織自体の存続可能性さえ危ういからである。
最後に
(C)有能だがフルタイムで働けない人の戦力化を妨げてしまう
について考える。
例えば、重要な意思決定に関する会議が「夜8時から開催」ということがあったとしよう。私自身がサラリーマンだった頃はそんなことなど日常茶飯事で、何ら疑念など抱かなかったが、自ら育児に携わるようになり、時間を含め諸々の制約条件ができてからは、その設定がいかにおかしいかに遅まきながら気づくことができた。
施設にもよるが、基本的に保育園や学童保育などで子供を預かってくれる時間は18時~19時くらいまで。それ以降まで受け入れてくれる施設もあるが、割高な延長料金、オプション料金などを支払わねばならないこともしばしばである。そんな人がいる都合も考慮せず、就業時間後に重要な会議を設定している組織は「多様性」について何ら配慮していないといえよう。
「そんな個々人の事情など関係ない。ウチは残業も厭わない社員だけで固めてるから大丈夫だ!」
「ウチは子供を作る予定もない!そんな一部の家庭の事情にかまってられるか!」
など声高に主張する人もいるが、皆「自分には関係ないこと」だと思い込んでいるから言えるのだ。
では、「ウチは残業も厭わない社員ばかりだ!」と安心する経営者は、その中の稼ぎ頭に思いがけず子供ができて、残業できない状態になったらどうするのだろう。
また、「子どもの予定はない!」と強気に主張するあなたの親御さんが、思いがけず要介護状態になったとき、それでも残業を厭わないハードワークを続けられるだろうか。
考慮すべき対象が「育児中の女性社員」だけだと思っているなら大間違いだ。育児したい社員にはもちろん男性もいるし、ちょうど働き盛りの中間管理職の世代では、その親御さんが要介護状態となり、残業したくてもできない、という事態になることも昨今増えている。そんな社員に「じゃあウチでは残業できないとダメだから、辞めてくれ」と言い放つ組織でよいのだろうか。
そう、これからの少子高齢化、労働力減少社会では、残業に頼らない「多様な働き方」を提供でき、「決められた時間内で成果を出せる」仕組みを用意できた組織だけが勝つのだ。