社員にも伝わる「感謝の欠如」
「以前のC社なら、絶対に受けてくれたでしょう」と、先代時代からの番頭役であるT常務がポツリと言いました。その一言が気になった私は、詳しい事情をたずねてみました。
「問題は、若社長がC社をどう思っているかです」
C社は元々創業間もない頃に、先代が足しげく通いお願して仕事を受けてもらった腕のいい下請け企業だそうで、先代はファミリーのように思って付き合い、オイルショックや円高不況の折にも随分助けてもらったのだと。
「若社長は、古くからの親交先とは知りつつも先代の気持ちを心底は理解できていないのでしょう。最近はコストの比較で他社に流れる仕事も多く、うちの社員もコスト重視一辺倒な社長の対応を肌で感じ、C社との接し方にも影響が出て今回のような対応を招いたのだと思います。コスト重視は分かります。しかし例えコスト重視で取引ぶりが変わろうとも、社長の先代から引き継いだ感謝の気持ちが社員に伝わりそしてC社に伝わるなら、今回のようなことにはならなかったのではないかと思うのです」
この話を受けて私は、若社長、T常務と三人で、改めて膝を詰めて話をしました。はじめは「今回は先方が出来ないと言う以上仕方ない。手当たり次第に他を当たる以外にない」で済まそうとしていた若社長でしたが、常務の話を聞いて「先代の苦労と関係先への感謝の気持ち」「社員の取引先に対する態度への影響」という部分に大変ショックを受けたようでした。