「ストーリーが予め出来ている」取材にどう対応するか 大手新聞の事例から

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   メディアが取材前から色メガネで取材対象をとらえる。あるいは、ストーリーが予め出来上がっていて、そこにはめ込むので事実が伝わらない。本質が異なるものを特集で一緒くたにするので、誤解を招く――。記者は一定のシナリオを描いて取材を進めるケースが少なくないので、自らのシナリオに拘泥すると、このようなことが起こりがちである。そんな時、企業はどう対応すれば良いのだろうか。

インタビューの質問にも恣意性が

   2014年の前半、ある大手新聞が、介護の1形態であるデイサービス事業で人気が高い宿泊サービス「お泊まりデイ」を特集した。連載タイトルは「報われぬ国―負担増の先に」。このタイトルだけを見ても、筆者は偏向の印象を受ける。「報われぬ国」とタイトルを付けるからには、なぜ報われないかの根拠を示さなければならない。そうでなければ、取材に協力する民間事業者は、利用者が報われない事業を行っていると受け止められてしまうだろう。

   記事を読み進めると、民間企業トップのインタビューが掲載されている。質問は「なぜ、お泊まりデイを広げているのですか」「部屋が狭いなど、劣悪な環境になっています」「福祉を営利事業にしていいのでしょうか」。このうち、ひどいと感じたのは2つめと3つめだ。「部屋が狭いなど、劣悪な環境になっています」と質問すれば、この企業が推進するお泊まりデイがそのようになっているとの誤解を読者に与えてしまう。お泊まりデイの事業所の一部にそのような例がみられることを伝えたかったのだろうが、言葉が足らなさすぎる。また、「福祉を営利事業にしていいのでしょうか」との問いは、営利事業だから劣悪な環境になるとの記者のストーリーがほの見えている。

   インタビューを受けた企業トップは、東京都の基準をもとに自主ルールをつくり、事業所を監視する監査室を設けていることを説明したほか、介護を福祉にすれば補助金の増額、税負担の減額で国の負担が増えてしまうことを訴えた。いずれも正論だが、特集全体の論調の中に埋没し、全体的にはむしろ悪い印象を与えてしまった。この特集は「報われぬ国」を強調したかったのだろう。しかし、新聞ならば「報われるようにするには、どうしたら良いのか」を検証すべきではなかったのか。

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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