今回のテーマは前回に続いて就活ナビサイトです。前回の内容に対しては某サイト関係者が怒り心頭らしいのですが、それはなかったことにして(できるのか!?)。
進化しているナビサイト
今回は来年(2015年)3月から稼働する就活ナビサイトを5社、比較していきます。
ナビサイトの基本機能はオープン以来、大きくは変わっていません。一方、一時は名をはせたエン・ジャパンの通称「エンナビ」は今(2014)年度での撤退が決まっています。近年はナビサイト不要論が出たり、その反論が出たり。
自著のサブタイトルに「ネット就活の限界。その先は?」なんて使っている分際で偉そうに......というツッコミはさておき、ナビサイトも進化しています。しかも、各社それぞれ違うわけで、ではどの辺がどう違うのかをまとめてみました。
リクナビ...SPIとの連動強化、オープンES
リクナビの大きな変更点はSPI受検です。リクナビ含めどのサイトでも、学生が個人情報を登録するとき性格検査を受検します。
リクナビは今まで独自の検査でしたが、2016版からSPIに切り替わります。SPIはリクルートの性格検査・能力検査であり、多くの学生は筆記試験代わりに受けます。
2016版では能力検査を除いた性格検査を受検(1回のみ)することになります。
SPIに慣れる、という点では学生に得。欲しがる人材像に合った学生を見つけやすい、という点では企業に得となる可能性があります。
一方、昨(2013)年開始のOpenES(オープンエントリーシート)は今年も継続。昨年、非難囂々(?)だった紹介者コーナーはひっそりと消えていました。まあ、継続していたらどうなっていたことやら...
マイナビ...動画講座が9月スタート
マイナビは動画講座「WATCH」を9月19日に始めています。これは企業のPRポイントをプレゼンする動画集です。おっと、マイナビは3月解禁を無視か、と思いきや、そうではありません。
学生は動画を見るために企業名で検索...ではなく、テーマから検索します。動画の最初には社名も出さずテーマに沿った内容をプレゼン。企業名は最後に登場します。ついでに言えばスキップ機能なし(あえて、だそうで)。動画講座ごとに復習テストがあって、受講済み一覧(企業名表示)がトップページとして出るのは3月以降...。3月解禁には引っかからなさそうですが、学生からすれば面倒なだけなような気も。
学生の自己PRには、Facebookの「いいね!」のような「Good Potential」(GP)を企業側が付けられます。3月以降、学生はGPを付けた企業一覧をマイページで確認できます。企業は企業でたくさん押された学生を検索することも可能。気になった学生にスカウトメールを送ることもできます。
日経就職ナビ...スマホで簡単・E‐DMを開始
日経就職ナビで大きな変更点はダイレクトメールです。今までのウェブメールだとパソコンならまだしもスマホだと開封率が極端に落ちていました。
学生からすれば、ただでさえ鬱陶しいダイレクトメール、しかもスマホだと、マイページからログインしないと見られないなど、手間。さらに開封率が落ちていました。
このダイレクトメール、企業からすれば1通いくら(それなりの金額です)でナビ運営会社に払っています。開封率が極端に落ちていると困るわけです。そこで変えたのが、E‐DM。これだとスマホから簡単に読めます。ただ、問題は従来のウェブメールと違い、どれだけ学生が開封したか、測定不能です。スマホ対応はいいのですが、この辺、企業はどう判断するか、分かれそうです。
あさがくナビ...一括エントリー廃止は吉か凶か
「学情ナビ→朝日学情ナビ(朝日新聞社が参加)」ときて、今度は「あさがくナビ」。しかし、名前以上に大きく変えたのが一括エントリーの廃止です。
学生からすれば、まとめてエントリーできる一括エントリー。しかし、企業からすれば、エントリー学生が増える反面、セミナー参加率は低くなる(本気でない学生が多いため)など弊害がありました。
そこで、あさがくナビは一括エントリーを廃止。代わりにナビ側が学生に個別企業を紹介するレコメンド機能を強化する、とのこと。学生のサイト内行動履歴を元にレコメンドする、とのことですが、さてどうなるか。
学生からすれば便利な機能が1つないわけで、他のナビに流れそうな気もします。一方で、多少、他のナビに流れてもセミナー・専攻参加率が上がれば、それは他のナビと違う大きなアピールポイントになります。果たして吉と出るか、凶と出るか。
JOBRASS(ジョブラス)...学生が就活プロフィールを登録
求人広告会社のアイデムが2012年に新規参入したJOBRASSも3年目。逆求人型就活サイトとして他の就活ナビとは全く異なる路線を歩んでいます。
他の就活ナビサイトは学生が気になる企業をエントリーしていくのが基本。一方、JOBRASSは学生が就活プロフィールを登録、企業側が気になる学生に選考オファーを出す、という形式です。
ちょっと変わってはいますが、逆求人自体、学生にも認知されるようになっています。それもあって登録学生も2015版では7万4147人(2014年3月31日時点)が登録。2016版ではさらに多くの学生の登録が見込まれます。
ナビ運営会社が抱える矛盾
ここまで5社のサイトを見てきました。共通点は学生へのアピール、企業へのアピール、それからスマホです。
ナビサイトは直接使うのは就活学生です。彼らをたくさん集めることがナビ運営会社にとっては重要です。
しかし、ナビ運営会社にお金を払うのは就活学生ではなく、彼らを採用したい企業側。その企業からすれば学生がナビに求めるポイントとずれていて当たり前です。
ナビ運営会社からすれば、お金を出してくれる企業は大事。でもその企業にアピールするためには学生を集めなければならない。その学生は企業と求めるポイントがずれている......、どの社もこの矛盾に苦しむことになります。
今年はスマホ対応がさらに拍車をかけています。さて、就活ナビは今後どこに向かうのでしょうか?今後も注目していきたいと思います。以上、採用最前線から石渡がお送りしました。(石渡嶺司)