「ノーベル賞」中村修二氏の「怒り」の正体とは何か

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中村氏のメッセージにこたえるために

   筆者は仕事柄、中村氏のメッセージをずっと追っているが、今回の受賞後の発言を聞いていると、かなりイメージが変わってきたように思う。以前は、それこそ会社に対する怨念のようなものを前面に打ち出していたが、それがかなり薄まり、自分を引き上げ、チャンスを与えてくれた経営者への感謝の念まで述べている。


   一方で、怒りというキーワードを述べるほど怨念は健在で、氏は若手研究者に日本からの脱出を勧めてもいる。恐らく、中村氏は、自らを縛っていたものが一企業の問題ではなく、社会全体にわたる昭和的価値観にあると気づいたのではないか。個人を縛り付ける運命共同体も、そこに入るために列を作るリクルートスーツ姿の学生たちも、経済活動と隔絶したままガラパゴス的な殻に閉じこもり続ける日本のアカデミズムも、そしてそれらを良しとしていつまでも変わろうとしない日本社会も、氏の怒りの対象のように筆者には思える。


   特許権の見直しや労働市場改革等、幸いにして現政権は進むべき方向自体はわかっているように見える。後は我々有権者がしっかり後押しし、その歩みをとどめないこと。それが、中村氏の怨念を絶ち、その怨念がたたり神のようになるのを防ぐ唯一の道ではないか。(城繁幸)


人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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