責任あるポジションに就いているビジネスパーソンにとって、「部下への接し方」は頭を悩ませることの1つ。仕事が円滑に回ることや部下の育成のためを思い、叱ることが多いという人も少なくないのでは。
ところが部下からしてみれば、叱られることは「育成」どころか「戦意喪失」につながることが多い、という調査結果もある。ネットのQ&Aサイトには、上司から叱られると、1日中引きずってしまう、という悩みも寄せられていた。
「自分は褒めている」上司と「褒められていると思う」部下の意識に差
公益財団法人「日本生産性本部」の「第3回『職場のコミュニケーションに関する意識調査結果』」(2014年8月28日発表)によると、
「部下または後輩の育成を行っている」と回答した課長が81.8%だったのに対し、「育成に自信がある」という課長は40.8%という結果だった。
「褒めることが育成につながる」と思っている課長が98.1%、「部下を褒めている」という課長は78.4%だったが、「上司は自分を褒める方だ」と回答した一般社員は48.6%にとどまった。
さらに「叱ることが育成につながる」と思っている課長が87.8%もいるのに対し、叱られると「やる気になる」一般社員は38.0%、「やる気を失う」一般社員は60.0%にのぼった。調査結果は、課長職417人、一般社員1045人から得た回答をまとめたものだ。
日本生産性本部では13年7月にも同様の調査結果を発表したが、「部下を褒めている」課長が80.3%に対し「上司は褒める方だ」という一般社員は51.4%。「叱ることが育成につながる」と考える課長が89.0%に対し「叱られるとやる気を失う」一般社員は56.8%だった。上司と部下の意識には、どうしても隔たりが生じてしまうようだ。
上手な叱り方は「理由を言う」「自分に置き換えて」
11年9月には、Q&Aサイト「教えて!goo」に「上司に叱られるととても嫌な気分になる」という相談が投稿されている。
相談者は「そのことが、ずーと頭から離れず、仕事もだらだらやって、その日一日全然やる気が沸かず、『早く帰りたい』とばかり考えてしまいます」「くだらない感情で頭の中ををずーっと満たしていて、やる気もモチベーションも持てない。それどころか、『あの上司早く死ねばいいのに。早くいなくならないかなー』と頭の中をくだらないことで一日中ずーと満たしています」と書いていて、なかなか深刻な悩みのようだ。
回答者からは「上司の立場ですが、叱るというのはすごくエネルギーのいることです。叱る方もけっこう嫌な思いをしていることがあるということを覚えておいてください。言わない方が楽なことも多いですから」「上司の場合、『会社の利益のために叱る』であれば、怒る人も怒られる人も、目的は合致していますし、『その人のために叱る』であれば愛情です。叱ってくれる人は、基本は自分のために叱ってくれる味方です」など、叱る側の気持ちを理解するよう諭すアドバイスが寄せられた。
「叱られるともう嫌になる」という部下の存在は上司も重々承知しているようで、ネット上には「上手な部下の叱り方」をレクチャーするコラムも多い。
「Business Media 誠」には12年11月、「部下を叱る2つのポイント」という記事が公開された。
「注意する際は『なぜなら』と理由をセットにする」「ミスを責めるのではなく『自分はああしてほしくなかった』という言い方にする」と効果的だと、実際そのように叱られたことが心に響いたという体験談付きで紹介されている。
「5セカンズ」というサイトにも、14年3月に「部下を上手に叱る10のコツ」という記事が掲載されている。
「論理的に話す」「どういった点について叱っているのかを明確に示す」「感情的にならない」などの10項目があげられている。
「それができてれば苦労しないよ...」と思う人も多いだろうが、これまでより少しでも、叱ることも褒めることも意識的にやるように努めることで、良好な部下との関係につなげられるかもしれない。(MM)