経営への女性登用がカギを握る
一方のT社長。男の職場で女性が上に立つ苦労はないのでしょうか。
「全然ありません。もちろん会長という後ろ盾があってはじめて私のやりやすさがあるわけで、それは大変感謝しています。でも、私は私なりに心掛けていることはあります。私はパートで入社して、会長の男気溢れる気前のよさに乗せられて気持ち良く働かせてもらった結果どんどんやる気を増したので、男気は出せないけれど、女の私だからこそできる皆に気持ちよく働いてもらう工夫、腹に不満を溜め込ませない工夫、を心掛けているのです」
Y会長が続けます。
「社長本人は気がついていないかもしれないけど、彼女が社長になってから、社内が随分おだやかになったなと思ってね。僕のところにケンカ腰で注文をつけにくる社員も、『それは社長に相談しろ』と言ってその後を見ていると、社長への物言いはうって変わって穏やかで、スムーズに事が運んでいるものだから笑っちゃうこともあるぐらいですよ」
会長が言う女性トップの効用として、社内がこのように穏やかな雰囲気に変わることで無駄な揉め事処理が減って効率的に業務が運ぶようになり、社員の定着率も上がっていろいろな面で支出が抑えられるようになったのだと。会長を後ろ盾にした女性T社長との二頭体制は大成功のようでした。
Y会長は最後に、「T社長だからこそできる男の職場での女性活用も徐々に進んでいます。モノの輸送も保管も、実は単なる力仕事じゃなくて女性的な丁寧さが喜ばれる時代なんですよ。『力仕事=男の職場』のイメージが強い我々の業界も、今に女性ばかりの職場になるかもしれませんぞ。ワッハハハー!」と豪快な笑いで締めくくってくれました。
なるほど、これまで男の職場的イメージが強い業界ほど、女性が活躍する余地はあるのかもしれません。そしてまた、男の職場の最たるものが企業経営なのかもしれません。安倍首相がアベノミクス3本目の矢である成長戦略の中核として取り上げる「女性の活躍推進」。そのカギを握るのは、G社のような女性をリーダーに据えることを理解した経営への登用ではないか、と実感した次第です。(大関暁夫)