先日、ある小学校が学校のそばにある田んぼで育てたお米をカンボジアに送るという心温まる記事を読みました。
「飢餓に苦しむカンボジアの人々に食べてもらおう」という心は温かいのですが、小学校という教育の場でこれをやってしまうのはどうかということも同時に考えてしまいます。
この小学校の教育で一番足りないのはリサーチです。
Googleでちょっと検索するだけで、カンボジアに米を送ることが無意味であることはわかります。
過去の印象に囚われず、現在の実態にあった行動をすること
そもそも、カンボジアは国民の8割が農民だと言われている農業国であり、穀物自給率は100%を超えています。ちなみに、日本は28%(飼料用含む。重量ベース)です。(農林水産省HP 食糧自給率の部屋 より)
米(精米)に限定すると、生産量は2014年の段階で日本が770万トン、カンボジアが490万トン。人口は日本1億2000万人に対し、カンボジアは1500万人ですので、国民一人当たりの米の生産量は5倍近くになります。また、2010年より国策として米の輸出に力を入れており、2012年の段階で90万トン。世界で9番目の米の輸出国となっています。(Grain: World Markets and Trade | USDA より)
この記事で、この小学生達の「米を貧しい国に送りたい」という気持ちを批判する気はありません。ただ、この企画を続けている学校の教育体制には問題があると思います。
カンボジアは実際二十数年前は世界最貧国のひとつであり援助も必要だったのでしょう。ポルポトの虐殺や、地雷を踏んだらサヨウナラの印象はいまだに色濃く残っています。しかし、これからこの世界を生きていく人にとって大切なのは、こういった過去の印象に囚われず、現在の状況を知り、現在の実態にあった行動をすることです。