「経済発展しやすいルール」は、人口ボーナス期とオーナス期で異なる
「オーナス期」の「オーナス(onus)」とは「負荷」のことだ。働く人よりも支えられる人が多くなる状態であり、労働力人口の減少もあいまって、働く世代が引退世代を支える社会保障制度の維持が困難となる。日本はオーナス期に入ってすでに20年経過し、しかも主要国の中でもっとも少子高齢化の進行が早いスピードで進んでいるところだ。
社会構造が違うと、そこで通用するルールも変わってくる。株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵氏によると、具体的にはこのように違う。
<ボーナス期に経済発展しやすいルール>
・なるべく男性が働く
→重工業の比率が高いため、体力で勝負できる男性がより求められる
・なるべく長時間働く
→均一なものをたくさん提供することで市場ニーズを満たせるため、早く安く大量に作って勝つために、成果に直結する「労働時間」を重視&評価する
・なるべく同じ条件の人を揃える。
→労働力は豊富にあるため、「転勤できる」「残業できる」といったフィルターでふるいにかけて採用。 入社後も、年次で効率的に一律管理し、出世競争に勝ち残るために必死にさせることで忠誠心を高める手法が有効。労働者は代替もできやすいので、立場は弱い。
<オーナス期に経済発展しやすいルール>
・なるべく男女ともに働く
→頭脳労働の比率が高く、かつ労働力は足りない。使える労働力はフル活用する必要がある
・なるべく短時間で働く
→時間当たりの費用が高騰している。日本人の時給は中国人の8倍、インド人の9倍。高度成長時代の「時間に担保した働き方」を踏襲しても費用に見合わない。残業に頼らず、短時間で成果を出すことで利益確保せねばならない
・なるべく違う条件の人を揃える
→モノが溢れ、「早く飽きがくる」市場。常に違う価値を、短サイクルで提供する必要がある。また、労働力は希少となり、転勤や残業可否で振るい落とすと「介護する男性」までいなくなる。「育児、介護、難病、障害は労働の障壁ではない」という労働環境整備が重要