2016年採用(2014年秋現在、大学3年生が対象)から就活時期が後ろ倒しとなります。
広報解禁(企業説明会の実施、就活ナビサイトの運営開始など)が3年生12月から3年生3月に、選考実施が4年生4月から4年生8月に、それぞれ後ろ倒しとなります。
この後ろ倒しを主導しているのは、大企業中心の経済団体である日本経団連。
就活後ろ倒しの歴史は死屍累々
しかし、就活後ろ倒しは日本初の就職協定が成立した1929年以降、過去80年間、ことごとく失敗し続けた歴史があります。
法律で規制せず、いくら大企業中心とは言え一民間団体に過ぎない(前身も含む)日本経団連の自主規制、しかも罰則なしではどうにもなりません。実際、現3年生対象の2016年採用以前において日本経団連の取決め(就職倫理憲章)では、4年生4月1日から選考開始となっています。が、実際には経団連非加盟の企業だと3年生1月下旬ごろから3月にかけて選考を実施していました(ここ、あとあと注目です)。
このコラムを読む学生はおそらくバカ正直な方より、ひねくれた(あ、ほめ言葉の意味ね)学生が多いはず。就活後ろ倒しは信用せず、では本当の選考開始がいつになるか、気になることでしょう。
これまでの取材をもとに予想をしてみました。その時期は、ズバリ、3年生3月、4年5月、7月の奇数月です。
以下、その根拠です。
4年7月は「後ろ倒しへの遠慮と先制攻撃」
経団連加盟企業(日程が1本のみか、8月開始含め他の時期との複数制かはともかく)、準大手企業などが該当。
ポイントは「後ろ倒しへの遠慮」「自称・先制攻撃」です。
8月でなくても7月であれば例年より遅くした、とも言えるぎりぎりのタイミングです。これが「遠慮」。
それから、大手が守るであろう8月の選考解禁よりも早く選考を実施することで先んじることができる(と思い込む)。つまり「先制攻撃」ですね。
変化球として7月に選考をあらかたやって8月1日の選考解禁日は最終選考、あるいは内定者研修をぶつけることも予想されます。
4年生5月は「担当者の多忙」「大学疲れ」
準大手ないし中小規模の企業が選考を集中させそうな時期がこの4年生5月。
ポイントは「採用担当の多忙」、それから「大学疲れ」です。大手・準大手企業でも採用担当者の人数が意外に少ない企業はそこそこありますし、中小規模の企業だと人事査定から総務まで兼任していることも。
こうした企業だと、6月(株主総会の実施・準備)、4月(新入社員研修)が多忙でパス。3年生3月以前は就活後ろ倒しからかけ離れすぎている、ということでこれもパス。
と言って4年生8・9月以降だと内定者研修が間に合わないなどの理由でやはりパス。
となると、残るのが4年生5月しかないのです。
経団連加盟の企業であっても、この5月ごろに実質的な選考を始めたり、リクルーター制度を活用したりすることも考えられます。
「学内説明会」ラッシュも選考時期に影響
それから「大学疲れ」とは、大学主催の学内合同説明会、学内企業セミナーの開催時期によるものです。
就活後ろ倒しによって、就職情報会社の合同説明会は3年生3月1日から一斉に開催されます。
一方、各大学の学内合同説明会、学内企業セミナーも同じく、3月からよーいどんで開催されます。どの大学も焦っているので各企業に対して「うちには早めに出てくれ」と依頼します。
例年も、12月に合同説明会と学内合同説明会が重複します。が、合同説明会が第1週、学内合同説明会は第2週以降、または1月、となんとなくすみわけができていました。
それが今度は学内企業セミナーも含め3月上旬から中旬に集中します。と言って学内合同説明会、学内企業セミナーに出ないとその企業は大学との関係が悪化しかねません。
そこで、できる限り大学の行事に出席していき、それから企業内での会社説明会をやってから選考、となると5月がちょうどいい落としどころ、となるわけです。
3年生3月は「史上初・経済団体の判断分裂」
企業規模としては中小ないしベンチャー企業。それから、業界としてはIT業界中心の企業が選考を実施しそうなのがこの3年生3月。
ポイントは冒頭でご紹介した「経団連無視」の新経済連盟です。
楽天は日本経団連に一度加盟ののち、脱退。同社(会長兼社長)が代表理事となり立ち上げた経済団体が新経済連盟です。
日本経団連の加盟企業は約1300社、それに対して新経済連盟は約700社。規模は日本経団連の半分以下ですが、IT業界は楽天、グリーなど主要企業が軒並み加入しています(ほかにCCC、東京急行電鉄、ベネッセなど)。
さて、この新経済連盟ですが就活後ろ倒しについては、三木谷浩史・代表理事が2013年5月8日に次のコメントを出しています。
「(就職活動の開始時期を遅らせる政府の要請について)会員企業に要請することにならないと思う。外資系に優秀な人材を採られるのではないか」
日本経団連は政府要請を受け後ろ倒しを決定。しかし、新経済連盟は政府要請を会員企業には要請しない、つまり、就活時期は各社判断というわけです。
あまり大きく報じられていませんが、就活・採用時期の歴史上、経済団体の判断が分裂するのは初めて。
つまり、主要経済団体が後ろ倒しで足並みを揃えている、という論拠がすでに崩れているのです。
実際、IT業界の多くは採用担当者数が少ない企業でも競合各社の動きから3年生3月、あるいは3年生2月以前に決める企業が続出しています。
以上、奇数月の実施理由をそれぞれまとめてみました。就活後ろ倒しの1年目は学生、大学、企業、三者それぞれストレスを抱えたまま就活を進めることになります。本当にいったい誰得なんだか。(石渡嶺司)