「海外生活がクセになる」働く女子 「会社や結婚の縛り」からの自由が欲しい

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   あなたの周りで、ワーキングホリデーなども含め、海外留学したことのある人はどれくらいいるでしょうか。独立行政法人「日本学生支援機構」(JASSO)が公表した2012年のデータによると、日本から海外へ留学する人のうち、65%が女性です。

   最近は男女差が縮まってきたようですが、10年前には女性が7割近くを占めていたことも。全体として、留学に熱心な女性が多いことが伺えます。なぜ、女性たちは海外を目指すのでしょう。

「結婚して主婦になるだけじゃイヤ!」

海外へ!
海外へ!

   今から100年以上前の明治時代から、長らく「留学の主役」といえば、男性でした。当時、アメリカへ留学し、女子教育の道を開いた津田梅子などは例外として、欧米で勉学に励んだのは「超」のつくエリート男性ばかり。女性にも海外留学の道が本格的に開けたのは、1980年代以降のことです。

   80年代といえば、女性の社会進出が叫ばれた「女の時代」。若い女性たちの間には、「結婚して主婦になるだけじゃイヤ!」というムードが高まっていました。しかし、仕事を頑張ろうにも、まだまだ会社組織は男性中心。1986年に施行された男女雇用機会均等法で、分かりやすい形の男女差別は影をひそめたものの、若い女性が活躍できる環境は整っていませんでした。

   若いOLたちが「こんなはずでは」と不満を溜め込んでいたところへ、85年のプラザ合意で円高が起こります。海外留学が、女子にも手の届くものになったのです。つまらない会社員なんて辞めて、海外へ行けば何かが変わるかもしれない。というわけで、バブル期には、OLが仕事をやめて海外留学するのがブームになりました。

「会社員以外の道」は海外にある

   1980年からスタートした「ワーキングホリデー」制度も、女性の海外進出に拍車をかけました。オーストラリアなど、治安が良くて風光明媚な土地で、働きながら休暇を過ごす。あるスポーツメーカーに勤めていた知人女子いわく、「ワーホリは、とにかく勢い」だそうです。「将来、結婚したら海外なんて自由に行けなくなるじゃない?20代の今しかできないと思ったら、もう行くしかない!って」とのこと。最初はオーストラリア。帰ってきて、派遣社員として1年働き、今度はセブ島へ。ダイビングの免許も取ったそうです。「海外経験は今しかできない」と語る彼女にとって、結婚や、終身雇用制度の中で働き続けることは、「自由じゃなくなる」こと。

   男性の中にも、「早期リタイアして、田舎で蕎麦打ちがしたい」などと言う人がいますが、それと似たようなもので、とにかく「会社員以外の道」を探っているのです。違うとすれば、海外を目指す女子たちは、定年後の「蕎麦打ち(=趣味)」を今、実行している点でしょうか。定年なんて待てない、というか、定年まで働くイメージができないのです。

   バブル崩壊後は、男女ともに、「一生、ひとつの会社に貢献し続ける」という働き方が現実的ではなくなっています。とはいえ、まだまだ男性の方が、「休みなく働き続けなければ」という重圧を感じているもの。それに比べて、多くの女性は身軽なようです。晩婚化で、学校を卒業してから結婚するまでの期間が伸びたのも、若い女性を海外へ向かわせる理由のひとつでしょう。

   語学留学に、海外インターンシップに、と励む彼女たちにも、「いつかは会社員に戻らないといけないし、結婚もしたい」という「タイムリミット意識」はあるようです。が、どこかで「自由じゃなくなるのが怖い」という思いもある。何が本当の自由か、なんて分かりませんが、会社や結婚という縛りから解き放たれた海外生活が「クセになる」のは確かなようです。私も会社員だったら、「思い切って海外留学だ!」となっていたかも......。(北条かや)

北条かや(ほうじょう・かや)

1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。著書に『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』。ウェブ媒体等にコラム、ニュース記事を多数、執筆。TOKYO MX「モーニングCROSS」、NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(2015年1月放送)などへ出演。
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