会見での「ウソ」の見抜き方 こんな「言葉」や「仕草」は怪しい

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   不正疑惑を報じられ、当事者が会見する――テレビやネット動画で、ときおり目にする光景だ。会見といえば、7月(2014年)にあった、兵庫県会議員(その後、辞職)による「号泣会見」は記憶に新しい。

   あの泣きじゃくるような話し方や表情から、テレビのワイドショーやネットのツイッターなどで大いに注目を集めたものだが、あの会見、「うその兆候を見抜く」マニュアルを知るプロの目から見ても、なかなか興味深い点が数多く含まれていた。

犯罪捜査や不正調査の担当者向けの書籍や教材も

あー、あー、マイクのテスト中
あー、あー、マイクのテスト中

   さて、いきなりだが質問を。「号泣会見」における元県議の次の言動のうち、「うそをついている兆候」と疑われるのはどれか?

1:質問を受けるたびに、いちいち「○○記者のご質問にお答えします」と言ってから回答を始める。
2:話している途中の「え~」がやたらと多い。
3:質問を受けた後に、しばらくの間沈黙する。
4:「○○記者、恐れ入りますが、もう一度質問していただけますか」と言う。

   以上4つの選択肢のうち、答えは......「すべて」である。

   この「答え」に対しては、「えっ?ちょっと待ってよ」と、違和感をもつ人もいるだろう。もちろん、人間には一人ひとり個人差があり、ある言動だけをとって「うそをついている」と断定するのは危険だ。

   しかし、さまざまな言動を総合的に分析していくと、見えてくるものがある。会見や面接、取調べにおける「うそ」をめぐる、相手の言葉や仕草の分析は、さまざまな心理学者によって行われており、犯罪捜査や不正調査の担当者向けの書籍や教材も出ている。

   例えば、筆者も所属している公認不正検査士協会(ACFE)の会員向けマニュアル(協会から購入可能。市販はされていない)には、不正調査における面接のスキルが取り上げられており、その中に言葉や表情、しぐさから読み取れる相手の心理状態についての解説が詳しく書かれている。

「考えるための時間稼ぎ」

   こうした観点から分析すると、先の「4つの言動」には、共通する「目的」が浮かんでくる。

   それは「考えるための時間稼ぎ」だ。本来ならば、正直に答えれば済むはずの話でも、仮にうそでその場を切り抜けようとした場合は、次から次へともっともらしい話をでっち上げなければならない。いかに想定問答の準備をしていても、予期せぬ質問をされれば言葉に詰まることもある。

   「では、○○記者のご質問にお答えします」という「儀式」を繰り返す様子などは、その数秒の間に必死に次のうそを考えるための時間稼ぎ戦法だ、と筆者の目には映った。話題となった、手を大げさに耳に当てる仕草も同様だ。

   繰り返しになるが、上記に触れた点だけで「うそ」かどうかを断定することは、当然できない。ただ、相手の真意を見抜くためには、話している内容だけでなく、その言い方や表情、身振り手振りにも神経を集中させる必要があるのは間違いない。

   この元県議の政務活動費疑惑をめぐっては、議会や市民団体が虚偽公文書作成容疑などで刑事告発しており、兵庫県警が捜査している。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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