後継指名を含め、引き継ぎ体制をしっかりと組んでおくこと
会社を立て直すことも、親密先の支援を得ることもできず、経営は立ち行かなくなったのです。Tさんが最後にしたことは、借金を抱える前に会社を解散して、とりあえず有り金でわずかながらの退職金を社員全員に配ることでした。心やさしいTさんらしい会社の幕引きでしたが、社員の反応は冷たいものだったと言います。
「人柄だけで会社経営はできない。Tさんは結局社長の器じゃなかったのです。会長はI社長以外に後継を育てていなかったのは仕方ないかもしれませんが、Tさんを社長にしたのは完全な人選ミスでした。後継の人選ミスが50年続いた会社をつぶしてしまったのです。最後まで残った私たち社員の生活はめちゃくちゃになってしまいました。本当に悔しい」
元同僚は涙ながらに話していたそうです。
中小企業最大のリスクは経営者に係る不慮の出来事です。不慮のリスクにいかに備えるか、O社の一件からは以下の3点を学びたいと思います。
(1)経営者は常に、自分に不慮の出来事があった際に備え後継指名を含め引き継ぎ体制をしっかりと組んでおくこと。
(2)経営者は、自身なき後の体制について社員に被害が及ばないことを念頭に、企業売却を含めた外部支援等の案を複数後継に託すこと。
(3)後継指名は不慮の出来事にも対処できるよう、人柄の良し悪しではなくリーダーシップの有無を最優先で判断すること。
経営者の勝手で社員にかかる最大の迷惑は、経営者を襲う不慮の出来事です。自己のなき後も考え社員の生活に責任を持つ。経営者に求められる大きな責任のひとつと言えるでしょう。(大関暁夫)