新社長は、重圧から指示が出せないという状況に
そんなO社に半年後、追い打ちをかけるようにさらなる不幸が訪れます。散歩中の会長が心筋梗塞で倒れ、お亡くなりになったのです。突然の長男の死と、それを受けた後継娘婿が思うように育たないもどかしさ、それらから来るいつ引退できるかも分からぬ出口のないストレスが寿命を縮めてしまったのでしょうか。会社は1年間の間に大黒柱を次々失い、最大の危機を迎えました。
ちょうどそんな折、我が家は私の脱サラ独立を機に、長年住み慣れた東京を離れることになり家内もO社を退職しました。私は東京を離れる際に、家内と共に会社にあいさつに出向き「商売抜きでいつでも相談に乗りますから、相談事があれば気軽に連絡をください」と言い残してTさんと別れました。
それから1年後、家内宛にO社の元同僚から電話があって、会社が廃業した事を知りました。約30人の従業員を抱え、会長の死によって責任を一気に背負う事になったTさんは、重圧から指示が出せないという状況に陥り、遂にはふさぎ込むような状況に。営業活動にも出ず社内にいて部屋に籠りきりというあり様で、司令塔を失った組織は沈みかけた船からネズミが逃げ出すように有能な社員から抜けていき、仕事もそれにつれて急激に減っていったと言います。