彼自身の「意見」や「希望」が全く出てこない
まあ、大学のブランド志向という面は確かにあるだろうし、個人の考え方やポリシーの問題であるのでその内容についてはコメントを差し控えるが、私が気になったのは彼自身の「意見」や「希望」が全く出てこないことであった。
「ご両親の希望はよーく分かったけど、君はどうしたいの?」「…お父さんがT大を出て研究者になれって」
「…なるほどね。君の将来の事を考えて、研究者を勧めてくれてるんだよね。で、君の希望は?」、「…お母さんが、T大の大学院を目指せって」
「……」。1000キロ離れていても親子の絆は強いようである。
少数ながら反抗期真逆の学生が、男女を問わず見受けられる。私も人の親であるから、初めて一人暮らしを始めた大学生をお持ちのご父母の心労も理解できる。一人暮らしの不安を軽減するためにも、こまめな連絡や援助は必要であろう。ただし、場合によっては弊害が生じる事もある。以前、母親に行動を束縛され、報告の義務感に捉われたリケジョが精神的に不安定になって、休学を余儀なくされたことがあった。何事も行き過ぎは良くないようである。
くだんのリケダンであるが、結局T大ではなく某私大の大学院に進学した。
うちに在学中は「夢をかなえるまで帰郷はまかりならぬ」という御両親の言葉に従い、夏休みも図書館で勉強していた。もう大学院も修了しているはずだが、無事、故郷に錦を飾ることはできただろうか……(プロフェッサーXYZ)