先日、24歳の女性が、厚生労働省の認定する「若者応援企業」に入社したのに十分な研修もなく、残業代も支払わなかったと訴訟を起こしました。朝日新聞(2014年8月8日)などマスコミ各社が報じた記事によると、女性は上司に質問しても指導はなく、逆にパワハラを受けたといいます。
このように深刻なケースで、訴えを起こさないまでも、入社してから「想像と違う!」と感じる若手は少なくありません。特に女子の場合、企業が「女性の活躍」を謳っているのに、実際は違う!と不安になることも多いのです。
「ワークライフバランス」という名のマミートラック
就活の企業説明会で、女子学生から必ずといっていいほど出る質問が、「出産しても仕事を続けられますか?」というもの。育休制度の充実度や、女性社員の「既婚率」、「平均勤続年数」などは、東洋経済新報社の『就職四季報(女子版)』を読めば書いてあります。が、そこまでの知識がない女子もいますし、数字だけでは分からないこともある。どうしても「企業担当者がどう答えるか」知りたいという女子は多いのです。「当社の(一握りの)スーパーキャリアウーマン」の存在をやたらと強調したり、「ワークライフバランス」という曖昧な言葉で逃げたりしないかどうか、見極めようとする女子もいます。
多くの企業は、本音と建て前を使い分けるのが上手です。学生向けの説明会では、「当社は女性が結婚・出産しても仕事と両立できる環境が整っています」と言って女子学生を惹きつける一方、内実は多くの既婚女性が「マミートラック」という名の「両立はできるが、簡単な仕事しかさせてもらえない」状態で「塩漬け」になっている場合も多いのでした。
熱い意思をもって入社したものの、こうした先輩女性たちの姿を見て「がっかり」する新人女子もいます。「理想の両立って何だろう?」と、悩んでしまうケースも少なくありません。
「男性社員と同じように働けるのは、子供のいない女性だけじゃん……」
最近では大企業でも中小のベンチャー企業でも、バリバリ活躍する女性が目立ちます。が、まだまだ「出産したら以前のように仕事が続けられなくなった、退職せざるを得ない」という女性が多数派です。20代のうちは男性と同じように「活躍」できても、30代になって出産したら「戦力外通告」。こうした現状を、一部の企業は「女性がたくさん活躍しています(ただし出産するまではね)」という言葉で、ごまかしているように思えます。
多くの企業には、若いうちからそれなりの仕事を任され、前向きに仕事をしている女性がいるでしょう。就活中の女子学生は、そんな「自分と年齢の近い女性たちの活躍ぶり」を聞いて、「そうか、私も頑張ろう!」と胸を躍らせます。が、入社してみたら、結婚や出産などのライフイベントと、仕事の両立は難しいと気づくのです。
30代、40代になって昇進している女性は、独身だったり子供がいなかったりすることもしばしば。会社員時代、20代女子で集まって飲む機会が多かったのですが、「男性社員と同じように働けるのは、子供のいない女性だけじゃん……」という話題になることがよくありました。こうした飲みの席では、何となく皆で不安を共有し合った後、「結局は自分がつぶれないように、ほどほどに働くのが一番だよね」と、お茶を濁して終わるのが常だったように思います。
本当は能力があるのに、「マミートラック」の別名であるかのような「ワークライフバランス」の実態を見て失望し、やる気をなくしていく女子社員たち。ワークライフバランスの実現は大切ですが、多くの企業には、こうした若手女子をいかに「長期的な視野で育てていけるか」もまた、問われているのではないでしょうか。(北条かや)