「空気を読む」を深読みする 常識と個性の関係とは

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   「空気」に関しては、ネットの定番テーマだと思う。空気なんか読むな!というのから、空気が大事だというのまで両極端な記事が沢山みつかる。

   空気を読んだほうがいい場合、読まないほうが良い場合というのに関しては、先日、ハーバード・ビジネス・スクールの研究に関する記事(WSJ)を読んで、うすうす思っていたことが、明確になった。

高級ブティックの店員は、ジャージの客のほうがお金持ちだと判定

「さて、経済学の授業を始めようか」
「さて、経済学の授業を始めようか」

   この研究では、服装について調査している。周りのひとの服装と違った服装をした場合の反応を調べている。

   一人だけ違った服装をしてきた場合、空気が読めないキワモノとみられるか、それとも個性的でユニークな人物であると肯定的な印象を持たれるか?

   ハーバードの研究は、まずは次のような調査から始まる。

   次の二人のどちらがお金をもっている人か?と聞いた。

・みなりのよい仕立てのよいスーツで入ってくる人
・ジャージのような相応しくない恰好で現れる人

   一般的なひとは、みなりのよい人のほうがお金をもっていると答えたが、ミラノの高級ブティックの店員は、ジャージの客のほうがお金持ちだと判定した。

「ジムに行く格好をした客は、それ以上着飾る必要がないほど自信がある」

というのだ。

   次は、大学教授について聞いたものだ。「ネクタイを締めきれいにひげをそった教授」と、「Tシャツを着て偽のひげをつけた教授」のどちらが尊敬できるかというアンケートに、学生たちは、Tシャツの教授を選んだ。

   これらの調査は、空気を読まない個性的な人物のほうが、肯定的にみられる場面があることを示唆している。

「その場の空気を理解しているが、それでも敢えてやっている」

   一方、別の場面では真逆の結論が出る。

   結婚式や、レセプションのようなフォーマルなイベントにおいて、黒の蝶ネクタイではなく、個性的なネクタイをつけていった場合についてアンケートをとっている。

   このような場合は、空気を読まない個性的な人物という評価はうしなわれて、単なる場違いで常識はずれな人物とみなされ、ネガティブな評価をされた。

   この違いはなんだろうか?

   空気を読まない行動が、場違いではなく、個性的だったり、創造的だったりという具合に、ポジティブにとらえられる条件はなんだろうか?

「ある人物が大物だと考えるためには、その人が積極的に人と異なる行動をとっていると理解することが必要だ」

と調査では結論している。

   つまり「その場の空気を理解しているが、それでも敢えてやっている」「空気を読まないなんらかの理由やポリシーある」といったことが相手に伝わるということだ。

   ホリエモンが、マスコミが集まる場など様々な場面でTシャツを着ていたのは、見た目より中身だ、というポリシーの体現としての行動なのだろう。

   まとめると、次のようなことになる。

基本ができてないと、単なるぐだぐだに

(1)空気が全く読めない奴
天然で本当に常識やマナーをしらず、傍若無人に振る舞っているひと。
→非常識で、ネガティブな印象を与える。


(2)ひたすら空気を読む奴
絶対に他人と違うことをしないよう、ひたすら周りの顔色を伺って目立たないようにするひと。
→没個性的で、ネガティブな印象をあたえる。


(3)あえて空気を読まない奴
空気は読めているのに、敢えて空気を読まない振る舞いをし、それが一貫したポリシーだと伝わるひと。
→高い尊敬を得る。

   単なる常識はずれと思われないために、人と違ったことをする場合は、敢えてやっていることを示すこと。自信をもってやること。やる意図をハッキリさせること。

   服装だけではなく、ビジネスにしても、はたまた芸術にしても、似たような話ができるとおもう。常識や基本や歴史やルールを熟知していて、あえてそこから崩したり、過去を否定して乗り越えたりするのは良いが、基本ができてないと、単なるぐだぐだになる。

   基本や常識と、個性の関係について、とても腑に落ちた気がする。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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