前回、「会議は企業文化を体現する」すなわち「会議が変われば会社が変わる」というお話をしましたが、今回はその関連で具体的な事例をもう1件ご紹介します。
精密機器部品メーカーB社のS社長は、発明家的な技術者の創業社長で超ワンマン経営でした。「技術者が中心の会社で社員に積極性がなく、もっと社内を活性化できないか」。そんなご相談をいただき、お手伝いをさせていただくことになりました。
ほぼ命令に近い形で会議は終結
社内活性化のお手伝いではたいてい、企業文化の根幹である会議運営を見させていただくことからスタートするのですが、B社においては議長を務めるS社長のワンマン会議運営が一目で分かりました。そこで、会議改革をすべくファシリテーター(中立的な進行役)を務めさせていただくことにしました。
まずは、役員、管理者クラス十数名が出席し企業運営の基本的方針を決める経営会議の進行をお預かりし、この会議がなるべく社長の独断の場にならないようにと、出席者に極力均等に発言を求めるような会議の流れをつくろうと努力しました。しかしながら、結果はほとんど効果ありませんでした。
私から発言を求められた社員は、ほとんどが「特にありません」、もしくは一言二言あたり障りのないことを言って終わり。会議が重要局面に差しかかると、社長が決定案と思しきものを皆に話をして、ほぼ命令に近い形で会議は終結するのでした。
「『走りテーター』だか何だか知らんが、会議は全然走らないな。君がやろうとしていることは、時間の無駄じゃないのか。口数の少ない技術者連中を会議で活性化させるなんて土台無理だろう。会議以外の活性化策を考えるべきじゃないのか」
私がファシリテーターを務めた初回会議終了後に、社長からはこんな辛辣な評価をいただきました。