「自分が得意だと思っていることに、溺れるな。物事の本質を鋭く透察する心を持て」
と語ったのはドラッカー。分析だけではなく、直観で物事の本質を鋭く透察する力がビジネスには必要と指摘しています。透察とは物事を見通すこと。類似した言葉なら洞察でしょうか。いずれもビジネス界で名言として登場することは、意外と少ない言葉です。おそらく、海外の常識で語るなら
<わからないことがあれば、相手に直接聞いてみるのが近道>
と考えるからかもしれません。
「会社には暗黙のルールがたくさんある」
ところが、日本では察することをビジネスで頻繁求めます。当方がリクルート社に入社して間もないとき、察することが出来なくて痛い目をみたことがありました。当方が所属することになった営業部で、翌日に会議が行われるタイミングの話です。「明日の会議は10時から開始します」と上司から伝えられたので、10時5分前に会議室入ると、
「若手は15分前までに来て、会議の準備を手伝うのが常識だろ!」
と注意を受けました。そんな、仕事は聞いていない...と言い返したいところでしたが、注意を受けたあとに、2つ先輩の同僚から
「会社には暗黙のルールがたくさんある。それを察するのも仕事だから」
とアドバイスをくれました。すべて納得が出来た訳ではありませんが、会社の常識を知る機会になったので鮮烈に記憶しています。さて、あなたは『察する』という言葉の意味をご存知ですか?ある海外の経営者と話をしたときに「まさに日本の文化を象徴しています。美学とも言えますね」とおっしゃっていました。海外では「言われたことをキチンとこなす」との風習が当たり前なので。
「気持ちを察して、これ以上の質問は控えておこう」
と、言われる前に自ら<相手の事情や心情を汲み取る>のは斬新なようです。ただ、最近はこうした察する行動が出来ない人が増えていると聞きます。あるメーカーの人事部長は「1から10まで言わないと行動が出来ない」と嘆いていました。ある意味、事実なのでしょう。ただ、それゆえ察して行動できる人は周囲から高い評価を得られるようになってきました。ある意味で絶滅品種なので希少度が高まっているとも言えるかもしれません。