「先生、夏休みだからってのんびりしてちゃダメなんすよ!! 近所の会社でも訪ね歩いて、息子の就職先を探してきてください」
「優秀な学生から推薦するって、どうゆうことですか?優秀な子だったらすぐに就職できますよ。そうじゃない子を推薦するのが当然じゃないですか」
「成績表に成績なんて書かないでください。取れた単位数だけで良いじゃないですか」
……こんなことを言ってくるご両親もいる。可愛い教え子のためであるから可能な限り協力させていただくし、努力もするが、無理なものは無理である。
目立つ「他人と争ったことのない学生」
学生は夏休みでも教員は休みではない。講義がない分、研究・雑務を行う季節である。推薦は……やっぱり推薦できる学生を選ばないと下手を打って二度と求人が来なくなることがままある。あと、成績が載っていない成績表なんてクリーミングパウダーが入っていないコーヒーみたいなものである。ちなみに私はブラック派だが。まあでも、大学に行くことの究極の目的は「就職」であろうから、御両親の気持ちも良~く理解できる。就職に苦労している御子息・御令嬢を見てて心を痛めておられるのであろう。
前に「叱られたことのない学生」の話を書いたが、最近「他人と争ったことのない学生」も目につく。昔は、小学校に入学すると同時に通知表という「他人との争い」があった。えっ、「通知表なんて今もあるじゃん!!」って? そう、でも、昔は「相対評価」なので「5」を貰う人がいれば「1」を貰う人も必ずいた。いまは、「絶対評価」なので、その教科の達成度を評価する。極端な事を言えばクラス全員「5」も可能である。つまり、「他人とは争っていない」。まあ、定期テストの点数分布が公表されたりするから、まったく順位が消されているわけではないけどね。じゃあ、入試で争ってるかというと、「高校も大学も推薦で」なんて学生はザラである。「推薦を得るために争っているじゃん」と言えなくもないが、「(該当校の)推薦希望者一人」だったりする。