管理職の研修で20代の若手社員について聞くと、悪い面についてはこういう話が出ます。
若いヤツは弱い、若いヤツは使えない、若いヤツらの考えていることはよく分からない。まだ続きます。若いヤツは我慢を知らない、若いヤツは根性がない、若いヤツは勘違いしているヤツが多い、若いヤツは積極性がない、若いヤツはガツガツしていない……
マネジメントができず、部下の育成もしない「名ばかり管理職」
最終的には「やっぱりゆとりだからな」の一言でまとめられます。
しかし……「そう言っているあなた達も実は全然ダメですね」ということを象徴している話を最近よく聞きます。
実績を認められて管理職になったのではなく、年功序列のお情け的な感じで管理職になり、マネジメントができず、部下の育成もしないという、いわゆる名ばかり管理職はけっこういます。
経営者や人事担当から、このような話が出ます。
「深刻なのは若手社員より、40代後半から50代の社員です。若手社員より人件費が高いのにそれに見合った仕事をしていません」
「管理職だけど管理職の仕事をしていない人もいて、部下の育成の意識が全くありません」
「仕事に対するやる気がないし、開き直っているので困っています」
「最近の若いヤツらは……」と言っている場合ではありません。
管理職になりたがらない社員が増えているということについて、若手社員のせいにされていますが、若手社員からすると「あんた達みたいにはなりたくない」というある種の絶望感があるというのも理由にあるかと思います。
世間ではいろいろな集計データがありますが、私は「実際にどうなんだろう?」と思ったので、直接確認をしたことがあります。過去に若手社員向けの研修で、「管理職になりたくない人はいますか?」と質問したら数人が手をあげたので、理由を聞いてみました。
「今の上司を見ていても希望が持てません」
「この会社にずっといようと思いませんから」
「管理職ってしんどそうですので……」
「管理職になっても良いことなさそうだし……」
せっかく芽を出そうとしているのに…
会社の中で管理職は一番大変だと思います。でも管理職になるということはその気になれば、自分の裁量で様々な仕事ができるということでもあります。若手社員の考えが甘いということや、キャリアの多様化が広がっているということも少なからずあるかもしれませんが、管理職の負の面ばかりが見えて、良い面がなかなか見えないし、お手本となる人がいないということだと思います。
会社からは「若手社員に、自律や仕事に対する姿勢に対する気づきを与えるような内容で研修をやって欲しい」と言われ、1日かけてやらせていただくことがあります。
こう言ってしまうのもなんですが、1日の研修を受けただけで全員が急激に変わるということはありません。変わったら魔法です。
私の感覚値ですが、10%程度は何らかの気づきを得て自分の行動を変えようとする人が出てきます。
職場に戻ったらちょっとやってみよう!
と少し前向きな姿勢に変わるものの、いざ職場に戻るとその前向きな姿勢は打ち砕かれてしまいます。「そんなことやらんでいい」とか「とにかく俺の言った通りにやればいいんだ」と言われ、自分で意識や行動を変えていこうとしてもなかなかできず、次第に
どうせ何かをやろうとしても無駄だな……
と諦めの境地に至ってしまう人も少なくありません。
せっかく芽を出そうとしているのに、摘み取られてしまうということです。
40代、50代をどうしていくかということが重要課題に
そんなのは甘いし、逆境にも屈せずにやれるくらいに強ければいいだろうと思われるかもしれませんが、そこまで強い人は滅多にいません。
新人=弱い。だから軍隊のような厳しめの新人研修をやる、といっている会社がありますが単に「弱いから厳しくする」だけで解決はできないでしょう。
意味がないというわけではありませんが、組織における根本的な問題を解決する必要があると思います。それは、上の世代の社員の意識と行動を変えていくということです。
某大手の会社では40代、50代の社員のウェイトが全体の30%になり、この世代をどうしていくかということが重要課題となっています。
40代、50代に何をやっても変わらないだろうという声は多いですが、今後向き合っていかなければならない課題となりつつあります。
実際に私は今年に入ってからは40代、50代の研修に取り組む機会が増えています。
若手社員と同時に研修を進めていますが、少しずつ変化が見えてきています。
この辺については別の機会でお伝えできればと思います。(野崎大輔)