理研に望みたいこと
Tさんが亡くなられた後ようやく、会社は社長と故Tさんの命がけの謝罪折衝が功を奏し、損害賠償は最小限に食い止め他社の受注をつなぎとめることでなんとかかんとか生きながらえました。そして1年後には当該メーカーからの受注も復活し、無事成長軌道に戻すことに。一方、故Tさんのご子息は大学を出て社長の口利きもありS社の受注先大手メーカーに無事就職しました。
「それで、ようやく肩の荷がおりたのですね」と問いかける私に、
「いや、この先も肩の荷は決しておりることはありません。あの一件で、Tさん一家が負った心の傷は決して消えませんし、ご家族が失ったものは帰ってきませんから。私は、経営者としてご家族を含め自社の社員を思う気持ちを持ちつつ経営にあたることの大切さを、私の後を継ぐ息子にしっかりと伝えることが今の務めであると思っています」
としんみりと語ってくれました。
亡くなられた理研の笹井さんにも、かけがえのないご家族が当然おありのことでしょう。理研には経営責任の立場から、しっかりと残されたご家族のフォローをしてあげていただきたい。O社長のお話を思い出しつつややもすると忘れがちな、「経営が負うべきもうひとつの責任」とも言うべきものの大切さにしみじみ思いを巡らせました。(大関暁夫)