すき家の「実態調査発表」、英断に拍手 「労働量とやりがい」のバランス提示にも期待

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   労働環境の悪化による大量の職場離脱から店舗休業が相次いだ牛丼の「すき家」。第三者委員会による実態調査報告書が公表され、注目を集めています。この話をきっかけとして、若手スタッフの定着率の高さで評判の居酒屋経営T社長が、ブラック回避のヒントを話してくれました。

   「高級店を除く一般飲食店経営にとって、いかにしてローコスト・オペレーションを実現するかは大変重要なテーマです。価格競争の激しいファストフード業界や大衆向け居酒屋業界はなおのこと。従業員は、スタッフが少ないと不満を言うけれど、多ければ文句を言わない。経営者は真逆です。少数スタッフで店が回ることはGoodであり、多い状態はBadです。店舗経営は両者の『バランス』の上に成り立っている。すき家さんはこの『バランス』が、特殊要因によって欠けたのじゃないかなと。結果、ブラックと言われてもしかたないかもしれないが、経営姿勢はブラックではなかったのではないかと思います」

この『バランス』をとることが、経営者の役割

「労働量とやりがいのバランス」とは
「労働量とやりがいのバランス」とは

   すき家の一件に関するT社長の感想です。社長はさらに自身が言う「バランス」について、自社店舗の管理実態あげて説明を続けます。

「うちの現場も確かに厳しい。一人の労働量は同業他社に比べて多いと思う。それでも一人ひとりにしっかり目標を持たせて、見返りも見せつつ達成意欲を鼓舞することで大半の人はやりがいを持って取り組んでくれている。私の考え方に合わなくて辞める者もいますが、定着率が高いのはそれがあるからだと思う。ハードワークで知られるマスコミ業界やコンサルティング業界がブラックと言われないのは、働く側にやりがいがあるから。すなわち『バランス』の正体は、『労働量とやりがいのバランス』。この『バランス』をとることが、業界問わず経営者の役割なのじゃないかと思います」

   私は以前、ある調査で飲食業界を辞めた従業員の人たちにインタビューを試みたことがあるのですが、辞めた理由を質問した際の代表的な意見はこんな声でした。

「数字、数字の毎日。数字を追えば労働量ばかりが増えるアリ地獄に疲れ果てました」
「長い労働時間。一人二役という名の下に増やされる業務量。報酬は変わらない」
「毎日毎日同じ仕事の繰り返し。先の見えない焦燥感が精神的苦痛になりました」

   これらの発言をよくよく読んでみると、辞めた従業員たちの言っていることはまさにT社長の言う「労働量とやりがいのバランス」が欠けた状態を表しているのが分かります。そして彼らが共通して言っていたことは、「あの職場はブラックだった」と。「労働量とやりがいのバランス」が欠けていると感じることが、すなわち働く側から見てブラックになってしまうのかもしれません。ならば、働く側から見てブラックと呼ばせないためにはどうしたらいいのでしょう。

   まず何より不平不満を生まない大前提は、法的違反がないこと。ここは最重要です。すき家の第三者委員会による実態調査報告書を読んでみても、急激なメニュー変更に二度の大雪という不可抗力が加わって同社労働時間が法的違反状況に陥り、労働量の突出により大量の労働力が流出してしまったのがよく分かります。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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