少子化対策したかったら、雇用と育児を切り離せ

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後から頑張っていくらでも挽回できるシステムに

   とはいえ、筆者は、今回の原告や裁判官が「そうはいっても数か月の育休で昇給させてもらえないのはおかしい」という疑問を持つこと自体はよくわかる。というのも、日本企業における基本給というのは毎年の昇給額を積み上げたものであり、たとえば今年生じた1万円の昇給格差は、下手をすると定年まで残る可能性すらあるからだ。そうなると(昇給するはずだった)1万円×12か月×20年といったレンジで育休のペナルティが生じる可能性もある。


   さらに言えば、日本企業の多くは、直近の数期分の査定成績をもって昇格の条件としている企業が多くあり、育休に伴うマイナス査定はそちらにも響く可能性もある。要するに、ベースが「年功序列」なので、休んだ期間分の減額を受けるだけで済まずに、その後も長くチビチビとマイナス影響が残ってしまうというわけだ。筆者も、これはおかしいと思う。


   だから、改善を求めるとすれば、それは企業内に色濃く残る年功序列的慣習であり、勤続年数や年齢によらず処遇を設定できる柔軟な人事制度であるはずだ。ちょうど先日、ソニーが「年功序列を廃し、役割に応じた賃金体系に移行する」方針で、近く労組と交渉に入ると複数報じられ話題となったが、まさにそれが「柔軟な人事制度」そのものである。


   育休期間中もきっちり保証はされるけど、使った後の影のペナルティが怖くてなかなか使えない的なシステムより、休んだ期間中はきっちり引かれるけど、後から頑張っていくらでも挽回できるし何歳からでも出世出来ます的なシステムの方が、よほど健全だと思うのは筆者だけだろうか。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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