コスト削減とリスクはトレードオフの関係
気がつけば年末商戦を前に、クリスマス・ディナー予約は前年の3分の1近くにまで落ち込んでいました。リーマンショックの影響だけでは到底説明できない状況です。「質が落ちた」という噂はすぐに広まるものです。「特別な日」のおもてなしニーズが、噂の広まりで他店に取られてしまっていたのは想像に難くないところです。
T常務は、ほどなく自ら会社を去りました。K社は5店舗あった店を2店舗に減らし、食材の質を戻すことで時間をかけて信用力の回復に努めることで外食事業を継続しています。
「マクドナルドさんの一件を耳にした時、T元常務の考え方と同じなのかなと思いました。大手になればなるほど、目先のコスト競争や生き残り策に必死になって、いつしかお客様は遠い存在になってしまうのかなと。うちは小さなサイズに戻すことで、お客様第一の原点回帰を合言葉に出直ししました。お客様商売、特に飲食業はお客様にリスクを押し付けるようなやり方は絶対にしてはいけないと、改めて実感させられます」
コスト削減とリスク発生はトレードオフの関係にあり、そのリスク発生が顧客に向くようなコスト削減はしてはならないのだという規模拡大時に忘れられがちなビジネスの基本を、再確認させられる一件でありました。(大関暁夫)