「妊娠・出産予定のある新卒女子の入社を、最長30歳まで待ちます」。今年(2014年)2月、ユニ・チャームが新卒採用の新たな取り組みを始めました。内定を出した女子が出産を希望する場合、数年間は子育てに専念し、アラサー以降に思い切りキャリアを積んでもらおうというわけです。
日本では、約半数の女性が出産をきっかけに退職しています(厚生労働省2010年調査)。せっかく入社した優秀な女性が出産で辞めてしまうのはもったいない、「だったら先に産んでもらおう」と発想を転換したのかもしれません。もっとも、こうした取り組みの先を行く形で、最近、20代前半で「早婚」して出産、その後のキャリアも諦めない女性が目立つようになってきました。
賛否両論を呼んだ「早婚の勧め」
5年前、評論家の勝間和代さんが「早婚の勧め」を提唱し、賛否両論を呼びました(毎日新聞「勝間和代のクロストーク」2009年5月3日)。勝間さんによると、若くして結婚すればダブルインカムで収入が安定する上、「社会的成長」もできる。出産という観点から見ても、20代は30代以上よりも妊娠・着床率が高く、子供に投資すれば、将来「成長した子どもが親に恩返しをして、精神的・経済的なリターンをもたらす」とのことです。
勝間さんは大学在学中に第一子を産み、当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得。在学中から監査法人に勤務し、今では経済評論家として多方面で活躍しています。「スーパー『早婚キャリアウーマン』」と言えるかもしれません。
勝間さんほどではないにせよ、若い女性の中には20代前半で子供を産み、キャリアも諦めない女性は結構います。某大手新聞社に入社したI子さん(28歳)は、入社後わずか半年で、同期男子と「できちゃった婚」。「子供は予想外だったけど、仕事をやめようとは全く思わなかった」と言います。周囲は驚き、アドバイスという名の忠告をくれる先輩もいたようですが、彼女は「記者としての仕事と子供、どちらも諦めたくない」と語ります。出産後は部署を異動になったものの、復帰して当たり前のように働き続けています。
学生時代に出産を「すませる」女子も
大学在学中、先輩との間に子供ができたY美さんは、「勢いで産んだ」と語ります。出産のために1年休学し、図書館司書の資格を取って卒業。今はサラリーマンの夫と暮らしながら、司書として働いています。Y美さんは、「仕事が命」というタイプではありません。ただ、「仕事か子供か」という二者択一はなかったといいます。家庭と仕事の両立は大変ですが、共働きで「平等な関係が自分には合っている」と言うのです。
20代前半からの「両立ライフ」は大変ですが、子供の成長やパートナーがいる安心感など、喜びも大きいでしょう。ユニ・チャームの「30歳まで入社待ちます」制度のように、ライフコースが定まってからキャリアも積めるというメリットもあります。ただ、もちろんリスクがないわけではありません。2005年の「国民生活白書」によると、20代前半で結婚する人の「できちゃった結婚」率は6割ですが、その世代の離婚率は4割と平均より高めです。「早婚」するなら、資格を取っておくなどして「シングルマザーになっても仕事を続ける」覚悟が必要、との見方もあるでしょう。
独身生活を楽しむ友人たちを見て、「仕事と育児に奔走する自分は……」と落ち込むこともあるかもしれません。勝間和代さんの「早婚の勧め」には、読者から賛成意見も寄せられた一方、「個人の問題だ」「結婚・出産と仕事の両立は(今の日本では)現実的ではない」との反対意見も目につきました。仕事もキャリアも諦めない「早婚女子」は、こうした日本の現状を打破する先駆けとなるでしょうか。(北条かや)