ノマド(nomad)は英語で「遊牧民」を意味する言葉だ。定住せず、移動しながら牧畜を営む遊牧民の生活になぞらえて、近年、場所や時間に束縛されずにIT機器を使って仕事をする人やその働き方を「ノマド」というようになった……という前置きはもう必要ないかもしれない。それくらい、ノマドという言葉は一般的になっている。
日本のノマドの代名詞的な存在としてwebや雑誌、テレビなどで発言をしてきた安藤美冬さんは、今や大学専任講師だ。外出先でインターネットに接続できる環境がますます整ってきたこともあり、ノマドは働き方やライフスタイルの選択肢の1つとして定着してきた感もある。
国内外を旅行しながら仕事と両立
先日、仕事をしながら世界中を旅するノマドが増えているという記事が産経新聞で配信された(2014年7月5日)。記事には30代ネットショップ経営者、20代サイト運営者、30代勉強会主催・講師の3人のノマドが紹介されている。この3人はLCC(格安航空会社)の普及も助けになって、国内外を旅行しながら仕事と両立させる夢を実現できているという。
ネットさえ繋がれば、ノマドは旅しながら仕事をし、仕事をしながら旅する生活が送れるのだ。こういった生活を送ることこそ、時間や場所に縛られないノマドの醍醐味なのかもしれない。しかも収入は「生活するには十分で、貯金もできている」とのこと。こんな生活、憧れる人も多そうだが、同時に、みんなそんなにうまくいってるの? という疑問も湧いてくる。
野垂れ死に覚悟? ノマドの理想と現実
日本経営協会の発表した「ノマドワーカーの働き方実態調査報告書」(ノマド236人へのweb調査、2月発表)を参照すると、ノマドになった理由は「自分の能力やスキルがより活かされる」という回答が最も多く、仕事上重視するのは「自分らしく働くこと」「専門能力・専門性を発揮して働くこと」という答えが多かった。一方で不安に感じることとして、71.6%が「収入が少ない」「収入見通しが立たず先細りが懸念される」と回答し、経済面での悩みが浮き彫りになっている。
そして10 年後も同じ働き方をしていたいと思うかという問いには44.5%が「思う」と答え、10 年後も同じ働き方をしていると思うかとの質問には「思う」の回答が30.5%だった。ノマドを続けたいけれど、それを実現できるかどうかわからないと考える人もいるということだろう。順調に仕事を継続していくノマドももちろんいるが、なかなか厳しい面もあるようだ。
先に紹介した記事へのTwitter(ツイッター)の反応は「全員がこんな働き方したら、世の中回らん」「拠点は持つべき」「旅先まで仕事に追われる」という否定的な見方もあったが、「理想のライフスタイルかも!」「やったもん勝ち」など、憧れの気持ちを表すつぶやきが多く見られた。
また「向き不向きはある」「家族できたらどうするんだろ」「端末片手に野垂れ死にする覚悟も必要かな?」など、憧れはあるけれどリスクや不安も感じる、という書き込みもあった。(RH)