国内のアルコール依存症患者が100万人を超え、予備軍を入れると1000万人近い人がお酒に依存した生活を送っているというニュースが先日、話題になりました。患者の圧倒的多数は男性ですが、女性患者がこの10年で2倍に増加したと聞いて、衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか。
「飲みニケーション」という言葉に象徴されるように、お酒の力を借りて親交を深めるスタイルは未だに健在です。仕事で飲酒の機会が増え、いつのまにか自宅でも飲むようになり、すっかりお酒が癖に……という女性もいるようです。
『働きマン』の「ストレスで多量飲酒」に共感
「怒るもんか……くそ!!酒が飲みたい」。2004年から2008年にかけ、講談社のモーニングで連載されていた大ヒット漫画、『働きマン』(安野モヨコ、休載中)。週刊誌の編集者、松方弘子(28)が、がむしゃらに仕事をしながら成長していく物語です。冒頭のセリフは、1巻の第4話で登場するもの。使えない後輩にイライラし、ストレスを発散させようと「酒」に走る弘子は、現代のバリキャリ女子の姿を一部象徴しているように思えます。弘子は結局、同僚男子と遅くまで飲んで泥酔。『働きマン』にはこうした、「ストレス→多量飲酒」のシーンが時々登場します。主人公が二日酔いで、会社のトイレで嘔吐する場面も。読者の中には、「そうだよな~、辛いことがあったら飲み過ぎちゃうよな~」と共感や同情を覚えた人もいるでしょう。
以前、泥酔した20代の女子社員を介抱するサラリーマンたちが、「彼女も最近、大変そうだったからねぇ」と、同情しているのを見かけました。こうした同情心の背景には、「(特に女性が)羽目を外して飲み過ぎるのは、普段頑張っている証拠、仕方がない」といった考えもあるのではないでしょうか。
女性が仕事の場で「私、飲めますよ!」と言えば、男性から喜ばれるという側面もあるようです。お酒に強ければ、「あの子は『女の子』だから」と変に遠慮されることもない。「飲みニケーション」ができれば、性別を超えた本音の付き合いができるだろう。仕事を頑張る女子の、そんな思惑も見え隠れします。お酒が飲める、飲みの誘いを断らないということが「アドバンテージ」となる会社や業界は、まだまだ多いもの。そんな環境に適応しようとするうち、次第にお酒にハマっていく女性もいるのです。
バブル期の「オヤジギャル」は良かった?
冷蔵庫には常に缶ビール、一人で晩酌が当たり前。たまに同僚と「仕事帰りにちょっと一杯」のつもりが、飲み過ぎて千鳥足で帰宅。翌朝は栄養ドリンクを飲んで何とか出社。こうしたライフスタイルの女性たちは、1990年の流行語「オヤジギャル」を彷彿とさせます。おじさんと同じような行動をとる若いOLを表現したこの言葉、当の女性たちに大受けしたそうです。男女雇用機会均等法ができ、女性の社会進出ムードが高まっていたバブル時代。「オヤジギャル」は、若いOLが「オヤジっぽくてもいいじゃん!でもあくまで私はギャルよ!」と、良い意味で開き直るための言葉だったのでしょうか。
とはいえ2010年代の今、男性並みに仕事をこなす女性が増加し、少なからずお酒に依存する例も増えていることを考えると、複雑な気持ちになります。仕事に加え、結婚や出産など女性としての人生も充実させなければ、というプレッシャーや不安から、お酒に依存していく現代女性たち。「仕事帰りにガード下で一杯」を物珍しそうに楽しむ「オヤジギャル」の時代は、まだまだ「お気楽」だったのかもしれません。(北条かや)