「お目つけ役」社員が「ミイラ」になるとき 子会社との「不正タッグ」はなぜ組まれたか

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「管理方針」は、お題目だけだった?

   一方、お目付け役であるA社社員が果たすべき「責任」は、上場企業として子会社の内部統制をがっちりと作り上げ、ミスや不正による損失が生じないようにすることだ。つまり、皮肉にも、自分の責任が厳しく追及されるような事態を自ら主導してしまったということになる。B社の管理体制強化に向けて孤軍奮闘する中で、自分の置かれた立場を見失い、「目標が達成できないと自分が責任を問われる」「そうなればA社にはもう戻れないかもしれない」というプレッシャーにとらわれてしまったのかもしれない。

   A社は、多角経営で増加したグループ会社を管理するために、以下のような立派な方針を掲げている。

●管理担当取締役を関係会社管理の総責任者とする。
●管理部内に関係会社管理グループを設置し、グループ各社の管理、指導を実施する。
●主要なグループ各社に取締役を派遣する。
●グループ各社は親会社と連携しつつ、自立的に内部統制システムを整備する。
●主要なグループ各社について、当社監査役が監査役に就任し、業務の適正を確保する。
●主要なグループ各社に対して、内部監査室が定期的に内部監査を実施する。
●グループ各社の社長が参加する会議を定期的に開催し、コンプライアンスを徹底する。

   これらがすべて文字どおり実践されていれば、B社に派遣した社員が道を誤ることはなかっただろう。しかし、残念ながらお題目だけのものが多かったようである。管理担当取締役、監査役、内部監査の「責任の追及」もしっかりやらなければならない。

   B社における不祥事はさらに拡大する可能性が指摘されている。第三者委員会調査報告書の内容に会計監査人が納得せず、調査委員会を再設置する事態に発展しているのだ。さらに、今期実施したLED事業会社への出資金を直後に減損処理を余儀なくされた。B社以外の子会社の管理体制の不備も懸念される。

   皆さんの会社の子会社には、十分に目が行き届いているか?子会社に派遣されて孤立している社員はいないか?(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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