女同士の飲み会で「セクハラ」の話題になると、様々な体験談が飛び出します。「思わせぶりなLINEが来る」といったものから、誰にも言えないような酷いセクハラで心を病み、退職して家事手伝いをしているという女子も。最近では男性社員が、上司からのセクハラに悩んでいるという話も見聞きします。
都道府県労働局の雇用均等室には、年間1万件近い「セクハラ」の相談が寄せられるそうです。相談できずにいる人のことも考えると、実際はもっと多いでしょう。
「それ、セクハラですよ~!」
この春から、とある中小企業に入社したF子(23)は、歓迎会で見た光景が忘れられません。酔いが回ったおじさん社員が、パート女性の腰に腕を回すわ、「キレイな手だね~」と手を握るわで、「これが会社組織の飲み会ってヤツ……!?」と、モヤモヤした気持ちになりました。
厚生労働省によると、性的行為の強要だけではなく、性的な冗談・からかい、食事やデートにしつこく誘う、性的な噂を流す、個人的な性的体験などを話す・聞く……いずれもセクハラにあたります。
「性的な冗談」は、時に『シモネタ』と呼ばれ、互いの距離を縮めるきっかけになったりもします。それを、相手の気持ちを考えずに押し付けるから「嫌がらせ」になるのですね。お互いの関係性を無視したセクハラありきで盛り上がっている飲み会などは、本当にイヤなものです。最近では男性も「言葉のセクハラ」などの犠牲になる例が多く、2007年の改正男女雇用機会均等法からは、男性へのセクハラも禁止されるようになりました。
職場でのセクハラに、対処法はあるのでしょうか。悩みながらもF子は、ある処世術を身につけました。期末の飲み会で、20代後半の女子社員が、40代の男性に向かって「それ、セクハラですよ~!」と明るく言っていたのです。それを見た瞬間、F子は「これは使える!」と思ったそうです。
決め手は笑顔でこの一言
セクハラをする人は大抵、「これは嫌がらせに当たるかな」なんて真剣に考えていません。飲みの席では、盛り上がってタガが外れた人もいます。そこで一言、「それ、セクハラですよ!」と明るく反撃するのです。もちろん現実には様々なセクハラがあり、急な対処が難しい場合もあるでしょう。それでもF子は、「それ、セクハラですよ!」と明るく言ってのける先輩に、性的嫌がらせを明るく蹴り飛ばす力を感じたのでした。
ただ「セクハラですよ」と言うだけでは、「どこがだよ!」と逆ギレされる可能性もあります。なので、具体的に教えてあげましょう。「手を握るのはセクハラじゃないですか~?彼氏以外にされたら嫌ですよ!」と、具体的にどこがイヤだったのか表明することで、相手の理解も得られるはずです。甘い見通しかもしれませんが、何も言わずに後悔するより、ずいぶん気が楽になるでしょう。他の人がセクハラに遭っているときも、迷わず「それ、セクハラじゃないですか~?」(笑顔で)。困っている同僚を、救えるかもしれません。
9年前に出た香山リカさんのエッセイ『働く女の胸のウチ』(2005年、大和書房)では、女性の同僚に「それ、セクハラですよ!」と言われ、「どこからがセクハラなのか、さっぱりわからなくて」と悩む男性編集者が登場します。彼の気持ちも、よく理解できる。なので、「あなたの発言のここがセクハラだと(私は)思いますよ」と、教えてあげるのがよいでしょう。あくまで「私はこう思う」と言うのがポイント。この方法なら男性も使えます。上司から性的な話題を振られて困ったら「それ、セクハラですよ」。「最近の若手はすぐセクハラだと言って心を開かない」なんて言われても、いいじゃないですか。(北条かや)