「やり手であるが、不誠実」な社員 「周囲がついつい黙認」の代償とは

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   米国のACFE(公認不正検査士協会)が、国際的な不正の動向に関する報告書の2014年版(Report to the Nations on Occupational Fraud and Abuse 2014)を発表した。

   世界各国で活動するCFE(公認不正検査士)に対するアンケート結果をまとめたもので、約1500件の不正の手口・期間・金額、犯人の役職・年齢・性別、被害にあった組織の形態・規模、不正発覚のきっかけなど、様々な切り口から不正の動向がまとめられている。

「不正を犯した人たちの行動や生活スタイル」の特徴

「一人で悩むなよ」と声を…
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   中でも興味深いのが、「不正を犯した人たちの行動や生活スタイルにはどんな特徴が見られたか」というものである。上位5つの特徴を見てみよう。

   1:分不相応な生活をしている

   これは、(1)分不相応な(収入以上のぜいたくをする)生活がたたってカネに困り、横領や汚職に手を染める、(2)不正に得たカネで羽振りがよくなり、分不相応な生活にはまり込むという2つの側面があるだろう。いずれにしても、ブランド品、高級車、マンションの購入、頻繁な海外旅行、高級レストランでの食事、ゴルフ三昧など、「彼(女)の給料で、なんであんなぜいたくな暮らしができるのか?」という疑問を感じたら要注意だ。

   2:経済的に困窮している

   カネに困る理由はいろいろあるが、典型的なのはギャンブル、遊興費だろう。競馬、競輪、競艇、パチンコ、キャバクラやホストクラブ通いにのめり込んで億単位のカネを横領する事件もある。「ハイリスクな投資に失敗して」というパターンにも要注意だ。また、家族の大病で医療費や介護費がかさんだり、離婚により慰謝料や養育費の支払いが必要になったりといった「家庭内の問題」も横領の原因になり得る。

   3:納入業者や顧客と異常に親密な関係にある

   発注権限をもつ社員が納入業者や外注先と親密になりすぎると、キックバック不正(業者に架空または過大な支払をして、その一部を自分に戻させる行為)のリスクが高まる。金融機関では、渉外担当者が長年担当する顧客との信頼関係を逆手にとって、現金や預金を着服する事件が後を絶たない。担当者と取引先の親密な関係は、営業上のメリットとなる一方で、不正に利用されるリスクも高まるということを、管理者は心得なければならない。

あいさつも含めて日頃からコミュニケーションの場を

   4:自分の職務を他人と分担したがらない

   これは、不正の発覚を恐れるストレスから生じる兆候だ。同じ理由で「怒りっぽい、興奮しやすい、疑り深い、身構えている」などの特徴も見られるようになる。例えば、現金・預金の残高や帳簿のチェックを他人にやらせないようにする姿勢が目立ってきたら、「なぜ何でも自分でやりたがるのか」という懐疑的な目で見ることも必要だろう。早朝や夜、人目を忍んでコソコソと仕事をするようになるのも危険信号の1つだ。

   5:やり手であるが、不誠実な言動が目立つ

   社内のルールを軽視する。会社の文房具や販促品などを平然と持ち帰る。平気でうそをつくなどの言動を繰り返す人は、不正を正当化しやすい。そういう人が会社の稼ぎ頭(やり手)だったりすると、周りもうるさいことを言えず、不誠実な言動を黙認しがちだ。「ダメなものはダメ」とガツンと言える上司の存在が不可欠である。

   もちろん、人間は十人十色。「こういう特徴を示す人は必ず不正をする」というものではない。何よりも大事なのは、普段から社員同士がお互いに関心をもって接することである。相手の普段の表情や話し方、行動パターンを「基準値」としてインプットし、異常値(基準からのずれ)を見逃さない感度が必要だ。あいさつも含めて日頃からコミュニケーションの場を積極的にもち、「いつもと違うぞ」「最近おかしいな」と気づいたら、「どうした?」「何かあったの?」「一人で悩むなよ」と声を掛けてあげることも、不正防止に欠かせない。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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