「やり手であるが、不誠実」な社員 「周囲がついつい黙認」の代償とは

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あいさつも含めて日頃からコミュニケーションの場を

   4:自分の職務を他人と分担したがらない

   これは、不正の発覚を恐れるストレスから生じる兆候だ。同じ理由で「怒りっぽい、興奮しやすい、疑り深い、身構えている」などの特徴も見られるようになる。例えば、現金・預金の残高や帳簿のチェックを他人にやらせないようにする姿勢が目立ってきたら、「なぜ何でも自分でやりたがるのか」という懐疑的な目で見ることも必要だろう。早朝や夜、人目を忍んでコソコソと仕事をするようになるのも危険信号の1つだ。

   5:やり手であるが、不誠実な言動が目立つ

   社内のルールを軽視する。会社の文房具や販促品などを平然と持ち帰る。平気でうそをつくなどの言動を繰り返す人は、不正を正当化しやすい。そういう人が会社の稼ぎ頭(やり手)だったりすると、周りもうるさいことを言えず、不誠実な言動を黙認しがちだ。「ダメなものはダメ」とガツンと言える上司の存在が不可欠である。

   もちろん、人間は十人十色。「こういう特徴を示す人は必ず不正をする」というものではない。何よりも大事なのは、普段から社員同士がお互いに関心をもって接することである。相手の普段の表情や話し方、行動パターンを「基準値」としてインプットし、異常値(基準からのずれ)を見逃さない感度が必要だ。あいさつも含めて日頃からコミュニケーションの場を積極的にもち、「いつもと違うぞ」「最近おかしいな」と気づいたら、「どうした?」「何かあったの?」「一人で悩むなよ」と声を掛けてあげることも、不正防止に欠かせない。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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