企業の人事担当者が高評価を与えている大学はどこか。就職・転職支援の日経HRがこのほど、ランキングをまとめた。
総合で首位となったのは京都大学。知力・学力と独創性で高得点をマークしたのが好結果につながった。注目は、「対人力」1位の福岡大学だ。キャンパス生活を通して、社会人として重視される「コミュ力」を育んでいる。
本気で勉強に励みたい学生に手厚いフォロー
ランキング結果は、日本経済新聞が2014年6月16日に報じた。「京大出身者を新卒採用した企業からは地頭の良さや論理的な思考力などの高さを評価する声が多かった」という。
興味深いのは、東京大学が総合25位と、京大に大きく水をあけられている点だ。地頭や高い教養といった項目では同等の評価を得ながら、なぜなのか。象徴的なのが「独創性」というカテゴリーで、京大は2位に入っている。
京大は自由な校風で知られる。松本紘総長は、大学受験生向け月刊誌「螢雪時代」2012年10月号のインタビューでこのことに触れ、「自由とは思考の自由であり、既存の概念にとらわれない創造性や独創性を意味します」とこたえている。京都という土地が、伝統と新たな挑戦のいずれをも重視する特徴があり、「自由でアカデミックな空気の流れる学生の街」と位置付けつつ、情報にあふれ、情報に振り回されがちな東京との違いを示した。
予備校大手の河合塾が運営する京大情報専用サイトにも、「自由な学風」の記述がある。「放任主義ということではなく、どういう姿勢で勉学に臨むかが、学生各個人に委ねられている」と説明し、本気で勉強に励みたい学生には大学側の制度やフォローが手厚く、「原則出席をとらない」ため、やりたいことに打ち込めるという。学生だけでなく教員にも自由が浸透しているそうだ。
卒業式がコスプレ大会のようになったり、「折田先生像」と称したパロディーの像を学生が毎年設置したりと遊び心を備えた学生と、ある程度のジョークを許容する大学側の姿勢。のびのびと過ごし、自分の長所を伸ばすキャンパスライフを送ることで、創造性が磨かれていくのだろう。
校歌の中でも「人らしき人」という言葉が出てくる
「対人力」でトップの評価を受けた福岡大学は、1934年に「福岡高等商業学校」として創立した私立大学。大学広報課に取材すると、「校歌の中にも『人らしき人』という言葉が出てくるほど、人格形成、人間教育を重視しています」と今回の結果を喜んだ。
学生の対人力強化には、大学側の様々な働きかけや取り組みがある。学生数2万人超、9学部31学科すべてがひとつのキャンパスに集い、「多岐にわたる専門分野の教員と学生、あるいは学生相互の交流が日常行われる教育研究環境にある」。例えば共通教育科目の中の「教養ゼミ」は、1クラス20人ほどの少人数制で、異なる分野の学生が集まって意見を交わす。また大学側が卒業生を招いて、学生時代の学びや経験を社会でどう生かしているかを在校生に本音で語る場も提供している。課外活動も盛んで、「1パーソン 1サークル」を合言葉に学生への参加を促しているという。
ゼミやサークル、ボランティアなどの「組織」に所属することで、自身の役割をまっとうするために周囲の人たちと円滑な意思疎通をどのように図っていくかを考え、身を持って学んでいくというわけだ。先輩後輩や教育、卒業生との日々の活発な交流が、「コミュ力1位」の基礎となっている。