ソニー株主総会にみる「社長の緊張感」の重要性 非オーナーなら「1年1年が勝負」

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「自らの進退を賭けている」をいかに社員へ伝えるか

   ほとぼりが冷めた頃にTさんとある会合で再会する機会を得、事の顛末をうかがいました。

「二年間で将来に向けての企業体質強化の基礎はできたとの自負はあります。しかし、業績回復に向け組織内の緊張感を呼び起こせなかったこと、すなわち実績を残せなかったことで、会長や幹部社員の私への風当たりが強くなりました。1年1年が勝負というサラリーマン社長としての緊張感とリーダーシップが足りなかった。私はゴーンさんのように、業績回復に向け『私はクビをかけてがんばるから君らも頼むぞ』と宣言してでも、社員を引っ張っていくべきだったのです」

   業績悪化時の社長の存在感に関しては、オーナー社長なら「最後までリーダーとして君たちと運命を共にする」という無言の求心力がありますが、サラリーマン社長にはそれがない。やれることは、「自らの進退を賭けている」という危機感や悲壮感をいかに社員に伝えて動かすかです。サラリーマン社長の業績回復に向けたリーダーシップのあり方は、そこにあるのだと認識させられた一件でした。

   さてソニー平井CEOの株主質問への回答ですが、お詫びと弁明を繰りかえしコミット要求に対してはノーコメントを貫いて終了しました。ゴーン氏が実践した業績低迷時なればこそのサラリーマン社長におけるコミットメント経営の重要性を思い描きつつ、それができずに更迭されたTさんの無念そうな顔が思わず思い浮かびました。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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