職場の「クインビー(女王蜂)」が「若い子」をつぶす?

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   日本企業は、まだまだ男社会。「女だから」という理由で特定の職種に配属されたり、昇進しづらかったりすることは、依然として多いものです。もちろん「男並み以上」に頑張って、成功を収める女性もいます。が、中には他の女性に厳しいタイプもいるようです。「私は女だから損をしている」と後輩たちが訴えても、「あなたの努力不足では?」と批判することもあるようです。

   このように、「男社会で例外的に成功し、かつ他の女に厳しいエリート女性」のことを、文芸評論家の斎藤美奈子さんは『紅一点論』(筑摩書房、2001年)の中で「クインビー(女王蜂)症候群」と呼んでいます。出版からは十数年が経っていますが、「クインビー」は今も生息中。あなたの職場にもいるのではないでしょうか。

「今の若い子は甘やかされすぎ」

ちょっと怖い?
ちょっと怖い?

   「わが社は男女平等に力を入れている」と主張する社長さんは多いのですが、日本企業で女性が高い地位を得るのが非常に難しいということは、データからも明らかです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、従業員100人以上の企業における「女性管理職の割合」は、課長級で7.9%、部長級ではわずか4.9%(2012年)。組織の中で女性が上を目指すのは、男性以上に大変だと分かります。

   そんな男社会でも、努力を重ねて成功する女性はいます。彼女たちの一部は、決まり文句のようにこう言います。「成功するのに男も女も関係ありません」。

   男社会でのし上がったその努力は尊敬できますが、そうした女性たちが「クインビー症候群」となって、「今の若い女の子は甘やかされすぎている。努力が足りない。私の入社した頃はもっと大変だった」なんて言ったりするのを見ると、複雑な気持ちになります。

   周囲の女性は、そんなクインビーたちを見て「ああまでして偉くなりたいとは思わない」と思ってしまうかも。男社会で地位を得た女性たちは往々にして、「私は髪を振り乱して働いてきたのよ」というような努力譚を語りがち。でもそれって、本当に多くの女性が求めていることなのでしょうか。

クインビー症候群の女性が「男社会」を批判しないワケ

   クインビー症候群の女性たちは、「男が女を評価する」社会の中で、努力してのし上がってきました。いわば、男性的な価値観を身につけた「名誉男性」。なので、女性の多くが実感する仕事上の悩みも「努力で何とかすべき」と考えがちのようです。自分をこのポジションにまで引き上げてくれた男社会のルールを、維持したいとすら思っているのかもしれません。

   なぜなら、「男社会」を批判すると、「そのルールにしたがって成功した自分自身の生き方を否定してしまう」からです。

   女性政治家の中には、「男は男らしく、女は女らしく」と発言する人が結構いる印象です。これも「自分が育った男社会を批判したくない」との思いが底流にあるように私には見えてしまいますが、どうでしょうか。日本の女性議員比率は10%程度で、たとえば衆院で約8%、都道府県議で約9%と、けっして高くありません(内閣府男女共同参画局資料など)。そこで成功するのに、男性とぶつかるのは得策ではないでしょう。彼女たちの発言が仮に「男性中心社会」の価値観に基づいたものであるとすれば、「多くの女性が働きやすい環境づくり」への道のりは、なかなか険しいのかもしれません。(北条かや)

北条かや(ほうじょう・かや)

1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。著書に『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』。ウェブ媒体等にコラム、ニュース記事を多数、執筆。TOKYO MX「モーニングCROSS」、NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(2015年1月放送)などへ出演。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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