前回、生意気な若手社員の中にも意外と素直な人もいるということをお伝えしました。
良かれと思って指導の一環としてせっかく注意しても
右から左に聞き流される人
「お前に言われたくねーよ」と思われる人
がいますよね。でも
「●●さんに言われたのなら仕方ないな」と相手から信頼されている人
もいますよね。この差は何でしょう?
彼らが一目置いている存在かどうか、だということです。
一目置かれるには…
一目置かれるには、やるべきことをやっている、憧れの存在、人間力、仕事ができる、
といったことが要因になるのだと思います。
問題のある若手社員を良い方向に導くためには、一目置かれる存在になることと部下育成という2つの視点が必要となるわけですが、具体的にどうやればいいのでしょうか。基本は、連合艦隊司令長官、山本五十六の名言
「やってみせ/説いて聞かせて/やらせてみ/ほめてやらねば/人は動かぬ」
です。このスタンスで対応すれば、一目置かれる存在になるのと同時に、部下育成をすることができます。
人を育てるにあたっては、褒めることが重要とされています。
褒めて伸ばす部下の育成法という類のものは、セミナーや書籍でたくさんあります。
もちろん褒めるのは大事ですが、「誰が言うか」ということが重要です。
私は、褒めるよりもここで言う「やってみせ」が最も重要だと思っています。
例えば私が、普段遅刻ばかりで時間にだらしない上司から「君は時間をきちんと守っていて素晴らしいね」と言われても、「お前の方がちゃんとやれよ」と思うだけです。面倒な仕事を人に押し付けて上手く逃げる上司に「君の仕事に対する姿勢はとても良いね」と言われても、「お前の姿勢は最低だけどな」と思います。全く心に響きません。
自分に問題がある場合でも、こういう上司に「ちゃんと時間を守らないとダメじゃないか」とか「嫌な仕事があってもとりあえず受けろ」と言われたら、無視か聞いているフリ、逆ギレのいずれかの対応をするだろうと思います。
自分の生き様、見せてますか?
部下が言うことを聞かないという場合、部下本人の仕事に対する姿勢や物事の考え方にも問題はあるかと思います。
でも、「部下が言うことを聞かない」という人は、自分自身の言動も振り返ってみてください。
自分の生き様、見せてますか?
生き様というと大袈裟かもしれませんが、「自分はこういうスタンスで仕事に取り組んでいる」ということです。そして仕事上で成果を出しているということです。
私が思うに、こういうことができている人は生き様を見せていると思います。
□ 嫌なことから逃げない
□ 自分の役割を果たす
□ 仕事上で自分の哲学を持っている
□ 言行一致している
□ 自分で考えて行動する
□ とにかく行動する
□ 決めたことはできるまでやる(失敗しても気にしない)
□ 謙虚である(いばらない、無駄に偉そうにしない)
上記の8つができていれば、おのずと仕事でも結果を出すはずです。
経営者がよく言うのは、「自分で考えて行動する社員が少ない。失敗したっていいのに」ということです。頭で考えて理屈は言うけどやらない人が多いです。今は失敗しても、とにかくやるということが求められています。
前回は、私が社員研修で体験した出来事をお伝えしました。
「そりゃ外部の講師の話だから聞く耳を持つんだろう」という誤解があるかと思うのでお伝えしますが、企業研修で来る講師の話なんて基本的に聞く耳を持ってくれる人は少ないものです。一部の有名な講師だったら話は別ですが、私のような普通の男の話なんて喜んで聞こうと思っている人はいないと思います。
まずは自分が「やってみせ」を
実際には前向きに勉強しようと思っている人は少数で、会社から参加を強制されているから仕方なく出ているという人がほとんどです。
だからまず私がやらなければならないことは、受講生に「こいつの話は聞いてみようかな」と思われるようにすることです。
別に、相手のご機嫌をとるようなことをやっているわけではありません。
自分はこんな人間だとさらけ出し、物事の考え方、自分のダメな点などを伝えます。
「俺はいろいろな失敗をしてきたけれど、こういう風にやってきたよ」
自慢ではなく事実を言います。事実に勝るものはありません。
ある意味ここでは自分の生き様、信念を見せているのです。
私が思う山本五十六の「やってみせ」は、単に仕事をやって見せるのではなく、仕事に対する姿勢、考え方なども含めたものです。
管理職の方は、外部からたまにくる研修講師なんかよりも部下と接する時間が圧倒的に多いはずです。だから関係性を作ることはできるのではないでしょうか。
まずは自分が「やってみせ」をやることが大事なのです。(野崎大輔)