民法上は「14日前に退職を申し出る」ことで成立
東京都が運営する労働問題相談のウェブサイト「東京はたらくネット」のページには、「辞めたいのに辞めさせてもらえない」際の打開策が掲載されている。
就業規則があればそれに従うのが原則だが、規則がなく契約期間の定めがされていない場合は、民法第627条に基づいて「労働者は14日前に退職を申し出ることによって、いつでも契約を解除できます」という。就業規則が14日を超える予告期間を定めている場合でも、民法が規則に優先すると考えられるという。もちろん円満退社が理想だが、会社側が「あと3か月は辞められない」と強弁するような場合は、法の裏付けをもとに押し切れるというわけだ。
NHKの番組「クローズアップ現代」は2012年4月26日放送分で、「やめさせてくれない~急増する退職トラブル~」を取り上げた。ここでは、退職を希望する男性に対して「損害賠償を請求する」と会社が脅した事例が紹介されている。会社が認めない中、それでも弁護士と相談して退職届を出すとその4か月後に訴状が届いたのだという。業績悪化を役員でもない男性に転嫁したもので、2000万円余りの損害賠償を経営側が求めたというのだ。だが地裁判決は原告側の敗訴で、逆に1000万円余りの未払い賃金を会社が男性に支払うよう命じた。
番組で、日本労働弁護団会長(当時)の宮里邦雄氏は、男性のケースについて、会社側が損害賠償を請求したのは法的な根拠が全くないと切り捨て、男性を辞めさせないための脅しの手段として裁判が使われている気がしたと話した。実際には「訴える」と脅す会社があっても、実際にはまず訴訟を起こせないとみる。
あの手この手で「都合のいい労働力」を手放さないようにする経営者の「魔の手」から逃れて退職するのは、法的には何も問題ない。それでも諸事情からなかなか踏み切れない場合は、まずは労働相談の窓口に相談するとよいだろう。